Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
消化器:肝・他

(S658)

“Osler病の肝病変”流速レンジを調節した観察

Observation of intrahepatic vessels in Osler patients changing velocity range

渡部 多佳子1, 石田 秀明1, 小松田 智也1, 古川 佳代子1, 長沼 裕子2, 大山 葉子3, 吉田 千穂子4, 奈良 和彦5, 長井 裕6, 小川 眞広7

Takako WATANABE1, Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Kayoko FURUKAWA1, Hiroko NANUMA2, Yoko OHYAMA3, Cioko YOSHIDA4, Kazuhiko NARA5, Hiroshi NAGAI6, Masahiro OGAWA7

1秋田赤十字病院超音波センター, 2市立横手病院内科, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4平鹿総合病院臨床検査科, 5東芝メディカルシステムズ株式会社超音波担当, 6N.G.I研究所超音波担当, 7駿河台日本大学病院消化器科

1Depart of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Depart of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 3Depart of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Depart of Medical Laboratory, Hiraka General Hospital, 5Depart of Ultrasound SystemGroup, Toshiba Medical Systems Corporation, 6Depart of Ultrasound SystemGroup, NEW Generation Imaging Laboratory, 7Depart of Gastroenterology, Nihon University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
Osler-Weber-Rendu病(以下,オスラー病)(現在の正式名はHereditary hemorrhagic telangiectasis (HHT))は肝内を中心に種々の血管異常を呈することが知られている.そのため,超音波でオスラー病患者を観察する時はカラードプラ検査が中心となる.今回我々は流速レンジを変えながら観察することで病変の把握に有用であった2例を経験したので,そのカラードプラおよびFFT所見を中心に供覧する.
【使用診断装置】
(症例1)東芝社製:AplioXG,(症例2)東芝社製:Aplio400(中心周波数3−4MHz)
【症例1】
30歳代女性.肝動脈瘤,肝血管腫合併例.肝門部に2個の肝動脈瘤,肝右葉に1個の血管腫を認めた.この肝血管腫の観察には通常の流速レンジ17cm/secでは血流情報を拾えず,さらに低速の3cm/secで明瞭に観察し得た.肝動脈瘤を含む動脈系の観察には流速レンジが通常の17cm/secでは振り切れてしまい,100−200cm/secに調節して初めて観察可能であった.
【症例2】
70歳代女性.動脈-門脈短絡,動脈-静脈短絡合併例.逆流している門脈は通常の流速レンジ20cm/secで観察可能であったが,動脈-静脈短絡のために流速が速くなった肝静脈の観察には速度レンジを60cm/secに調節する必要があった.さらに高速の肝動脈の観察には流速レンジを200cm/sec程度に調節し観察する必要があった.
【まとめと考察】
オスラー病において,肝ではまず末梢レベルでの血管内腔の拡張や動静脈短絡が生じ,これが次第に顕在化すると考えられている.画像診断で見られるマクロの所見は1)肝動脈瘤形成と2)肝内血管の短絡が主で,前者は血管壁の弾性線維の変性,後者は末梢レベルの小短絡が発展したものと考えられている.さらに,これらの無数の短絡形成により肝動脈は異常に拡張蛇行する.そのため,血流速度に関しては,肝門部レベルで約150m/secと正常人の約3倍の流速となっている.このことは通常肝門部の肝動脈を観察する場合よりはるかに流速レンジを高く設定しないと“振り切れてしまい”適切な観察ができないことになる.このことは動脈-静脈短絡をきたした例での肝静脈の観察にも当てはまり,100cm/sec近い設定が必要となる.しかし,オスラー病では巨大な動脈-門脈短絡を伴わない場合,通常の20cm/sec前後であるため門脈の観察では通常の流速設定が適している.一方,オスラー病では低頻度ながら血管腫の合併も報告されており,今回の症例1のようにその遅い血流を観察するのは数cm/secのようなかなり遅い設定が必要になる.最近,腹部超音波検査の中で,カラードプラ検査が軽視される傾向がある.その代表的な事例として,流速レンジを全く変化させないでの観察が挙げられる.最適な流速レンジでの観察がカラードプラ検査の基本である.このことを再認識させる症例であったので報告する.
【参考文献】
Naganuma H, Ishida H, Niizawa M, et al. Hepatic involvement in Osler-Weber-Rendu disease:Findings on pulsed Doppler and color Doppler sonography. AJR.1995; 165:1421-6.