Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
消化器:消化器・その他

(S654)

Volume dataを利用した少量の腹水の観察

Observation of ascites in small amount by using volume data

渡部 多佳子1, 石田 秀明1, 小松田 智也1, 古川 佳代子1, 八木澤 仁1, 石井 透1, 長沼 裕子2, 大山 葉子3, 奈良 和彦4

Takako WATANABE1, Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Kayoko FURUKAWA1, Hitoshi YAGISAWA1, Toru ISHII1, Hiroko NAGANUMA2, Yoko OHYAMA3, Kazuhiko NARA4

1秋田赤十字病院超音波センター, 2市立横手病院内科, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4東芝メディカルシステムズ超音波担当

1Department of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Department of Ultrasound SystemGroup, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【背景1】
近年のコンピューター技術の進歩に伴い,等間隔の多数面情報を短時間に自動的に収得可能となった.この情報全体はvolume dataと呼ばれ,これを基に多彩な活用が可能である.その代表的なものにMulti−plane表示があり,検査中の観察断面(A−plane)を基準に時計軸に90度プローブを回転させた断面のB−plane,そして,一般の3D表示法のZ軸にあたるC−planeで,特にC−planeは超音波ビームに対して垂直な平面で再構築画像以外には得られない断面であり,その活用が期待されている.
【背景2】
超音波は少量の腹水の拾い上げに優れており,その代表的なものにWeillらのButterfly sign(以下,BS)がある.これは肝,脾,消化管,周囲の少量の腹水が三角状の無エコー域として認識され,その様相が枝葉に止まる蝶をほうふつさせることから命名されたものである.我々は過去の本学会でプローブの軽い上下運動(圧迫−解除の反復)が,当初不明瞭であったBSが明瞭となることで少量の腹水の拾い上げに有用である事を報告した.しかし,BSが明瞭な場合でも不明瞭な場合でも腹水量は一定であるはずで,不明瞭な場合の腹水の状態に関しては明らかにし得なかった.今回我々は下記の方法でこの問題を検討し若干の知見を得たので報告する.
【使用超音波装置】
東芝社製:AplioXG,Aplio500,Philips社製:IU22xMATRIX,GE社製:Logiq E9
【対象と方法】
下記のBS(+)症例を対象にBS(+)時のvolume dataとプローブの圧迫によりBS(−)となった瞬間のvolume dataを収得し,両者のA−planeとC−planeを比較した.症例の内訳は,a)癌性の悪性腹水20例(胃癌9,大腸癌7,膵癌4),b)良性腹水20例(肝硬変12,低蛋白症3,心不全3,腎不全2)
【結果】
1)A−planeでBS(−)となった瞬間C−planeで,悪性腹水群では16/20(80%),良性腹水群では17/20(85%)が横方向にBS(+)となった.2)そのBSの形状に関しては圧迫前のA−planeと圧迫後のC−planeの像はほぼ一致しhorizontal BSと呼べる結果であった.
【まとめと考察】
今回の検討で示されたように,少量の腹水は臓器の間隙にはまり込む特徴があり,圧迫により画像(A−plane)上間隙(腹水がはまり込む空間的余裕)が無くなっても,横方向の間隙に逃げこむため,これがC−planeでhorizontal BSの形で現れているものと考えられた.従来は横方向への広がりの全体像を表現できる技術が無かったため,このBS(−)時の腹水の動きを把握できなかったものと思われる.超音波検査の場でもvolume data収得が容易になってきている.しかし得られた情報をどう利用するかについては,これからの課題である.今回の検討で示されたように同時間のA−plane,C−planeの比較という手法は今後広く利用されるべきと思われる.特にC−planeはvolume dataからの再構築以外には可視化しえない断面であり,C−planeの活用は超音波診断に新しい視野を開くものと期待される.
【参考文献】
Weill FS, Rohmer P, Beloir A, et al. The butterfly sign: an indicator of fluid within both the greater peritoneal cavity and the lesser omental brusa. J Ultrasound Med 1983; 2: 161-164