Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
循環器:弁疾患・その他Ⅱ

(S651)

肝細胞癌の経過観察中に発見された心臓腫瘍の2例

Two cases of cardiac tumor complicated by hepatocellular carcinoma

武田 侑子1, 水野 麗子1, 吉村 佳子1, 森嶋 良一1, 吉田 秀子1, 内池 敬男1, 藤本 眞一2, 岡本 康幸1

Yuko TAKEDA1, Reiko MIZUNO1, Yoshiko YOSHIMURA1, Ryoichi MORISHIMA1, Hideko YOSHIDA1, Yoshio UCHIIKE1, Shinichi FUJIMOTO2, Yasuyuki OKAMOTO1

1奈良県立医科大学附属病院中央臨床検査部, 2奈良県立医科大学教育開発センター

1Central Clinical Laboratory, Nara Medical University, 2Center for Education Development, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
心臓悪性腫瘍は稀な疾患であり,原発性腫瘍と他の悪性腫瘍からの転移性腫瘍に分けられる.今回,我々は肝細胞癌の経過観察中に発見された2例の心臓悪性腫瘍を経験したので報告する..
【症例1】
74歳,男性.平成19年から肝硬変(HCV陽性)のため近医で加療を受けていた.平成24年1月の腹部造影CTで肝細胞癌と右房内腫瘍を指摘され当院に紹介された.来院時の心電図および胸部レントゲン像では,異常は認められなかった.経胸壁心エコー図では,右房内を占拠する60x40 mmの腫瘤が認められ,右房拡大が認められた.腫瘤は可動性に富み,拡張期には三尖弁レベルに達したが,嵌頓は認められなかった.経食道心エコー図では,腫瘤が下大静脈付近の右房壁に付着していることが確認され,腫瘤の一部は下大静脈内にも張り出していたが,肝との連続性は認められなかった.心臓CT・MRIでも下大静脈から右房にかけて拡がる房状の腫瘤が確認された.腫瘤のサイズおよび可動性から心腔内血流障害および塞栓症が危惧されたため,摘出術が施行された.摘出標本の病理所見より肝細胞癌の心臓転移性と判断された.
【症例2】
69歳,女性.平成2年に慢性肝炎(HCV陽性)を指摘され,近医で加療を受けていた.平成20年2月に肝細胞癌を診断され,同院でRFAやTACEが行われた.平成21年12月の胸腹部造影CTで心室中隔から左室内腔に突出する腫瘤を認めたため,当院に紹介された.経胸壁心エコー図では,心室中隔に付着する3×2 cmの有茎性の可動性腫瘤を認めた.経食道心エコー図でも同様に心室中隔から左室内腔に突出する表面やや不整な2.5×3.5 cmの腫瘤が認められた.腫瘤は増大傾向を示し,塞栓症が危惧されたため,腫瘤摘出が施行された.摘出標本の病理所見では,分類不能の悪性腫瘍と判断され,明らかな肝細胞癌の心臓転移を示唆する所見は認められなかったことから原発性心臓悪性腫瘍と考えられた.
【結語】
肝細胞癌の経過観察中に発見された2例の心臓腫瘍を経験した.そのうち1例は,肝細胞癌の心臓転移であり,他方は原発性心臓悪性腫瘍であった.転移性心臓腫瘍は,悪性疾患の増加および癌患者の生存期間の延長に伴い,発見される頻度は増加の傾向にある.悪性腫瘍の診療においては,転移病巣検索の一環として心臓転移の可能性についても留意することが重要と考えられる.また,非常に稀であるが,本例のように原発性悪性心臓腫瘍が肝細胞癌に偶発する可能性もあることを念頭におく必要がある.