Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
循環器:弁疾患・その他Ⅰ

(S650)

経食道心エコーで三尖弁と僧帽弁に疣腫がみられた感染性心内膜炎の1例

A case of infective endocarditis with mutiple vegetations of tricasupid valve and mitral valve

後藤 千鶴2, 武田 里江子2, 谷口 京子2, 小谷 敦志2, 河野 ふみえ2, 山本 広之1, 山本 裕美1, 平野 豊1, 2

Chiduru GOTOU2, Rieko TAKEDA2, Kyouko TANIGUCHI2, Atushi KOTANI2, Fumie KOUNO2, Hiroyuki YAMAMOTO1, Hiromi YAMAMOTO1, Yutaka HIRANO1, 2

1近畿大学医学部附属病院循環器内科, 2近畿大学医学部附属病院中央臨床検査部

1Department of cardiology, Kinki University Hospital, 2Central Clinical Laboratory, Kinki University Hospital

キーワード :

【症例】
40歳代女性
【主訴】
意識消失
【現病歴】
1週間前から全身倦怠感を訴えていた.昨日家人が意識レベル低下をきたしているのを発見して,救急搬送を依頼された.近医搬送されたがseptic shockのために,処置困難とのことで本院転送となった.
【来院時所見】
身長158cm, 体重64kg,意識レベルJCS II-10,体温38.8℃,血圧110/81 mmHg,心拍数152/分,心尖部と第4肋間胸骨左縁で収縮期雑音Levine 2度を聴取した.両側肘窩に刺入痕あり.血液検査では白血球15400,CRP 27.3 mg/dl,BUN 95 mg/dl,クレアチニン5.79 mg/dlであった.
【入院後経過】
入院時頭部CTでは多発性脳梗塞の所見があり,腹部CTでは脾臓に梗塞がみられた.血液培養検査でグラム陽性球菌が検出されたため,経胸壁心エコーが施行されたが,経胸壁からは画質不良のために評価困難であった.発熱,血液培養結果から感染性心内膜炎を疑い,診断確定のため経食道エコーを施行した.経食道エコーでは僧帽弁P3から長径27mm x 短径7mmの内部heterogeneousな疣贅があり,P3の弁輪部にlow echoicな部分あり,僧帽弁輪部膿瘍を疑う所見がみられた.三尖弁にも中隔側に長径11mm,前壁側に長径24mmの可動性の大きな疣腫が観察された.さらには心房中隔の卵円孔でわずかの開存が確認された.カラードプラでは三尖弁逆流と僧帽弁逆流が中等度みられた.大動脈弁には異常はなかった.以上から経静脈感染から三尖弁に疣腫が形成され,さらには卵円孔を経由して僧帽弁に疣腫が出現したのではないかと推察した.多発性脳梗塞がみられたため,抗生剤治療を継続して,2週間後に外科的治療(僧帽弁置換術+三尖弁切除および形成術)が施行された.
【結語】
臨床的に感染性心内膜炎を疑われたが,経胸壁心エコーでは疣腫の描出が困難であり,一度は異常なしとされた.しかしながら発熱継続のために経食道心エコーを追加施行したところ,三尖弁と僧帽弁に付着する疣腫が確認できた.発熱が持続する場合には,感染性心内膜炎を考慮に入れて,積極的に経食道エコーを用いて診断すべきである.