天野 裕久¹, 大谷 直由¹, 有川 拓男¹, 竹川 英宏², 豊田 茂¹, 髙田 悦雄³, 井上 晃男¹

Hirohisa AMANO¹, Naoyuki OHTANI¹, Takuo ARIKAWA¹, Hidehiro TAKEKAWA², Shigeru TOYODA¹, Etsuo TAKADA³, Teruo INOUE¹

¹獨協医科大学心臓・血管内科, ²獨協医科大学神経内科脳卒中部門, ³獨協医科大学超音波センター

¹Department of Cardiovascular Medicine, Dokkyo Medical University, ²Neurology Stroke Division, Dokkyo Medical University, ³Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University

キーワード :

【背景】
肺高血圧症において右心不全の有無は生命予後に深く関与している．これまで右心機能の評価は主に右心カテーテル法で行なわれてきたが，より侵襲度の低い心エコー図での評価は困難であった．
【目的】
今回我々は肺高血圧の診断においてGolden Standardである右心カテーテル法での各指標とより侵襲の低い心エコー図の各指標の関係について検討した．
【方法】
2010年にASE（The American Society of Echocardiography）から右心機能の評価指標が提言された．今回，提言された心エコーでの右心機能評価指標のうち，TAPSE，A’，E’，S’，FAC，RV-TEI indexと右心カテーテル法での右房圧（RAP），平均肺動脈圧（MPAP），心拍出量（CO），肺血管抵抗（PVR）との関係について検討した．また，血液検査でのBNP値と心エコー図での各指標との関係についても検討した．
【対象】
当科通院中の肺高血圧症例25例（肺動脈性肺高血圧症7例，慢性血栓塞栓性肺高血圧症17例，肺線維症による肺高血圧症1例）で，右心カテーテル法でのMPAPは33.0±11.9mmHgであった．
【結果】
心エコー図でのA’はRAP（r=-0.62 P=0.0009）とFACはMPAP（r=-0.51 P=0.0092）との間に相関が認められた．またS’とTAPSEはPVR（r=-0.53 P=0.0059，r=-0.59 P=0.0018）との間に相関が認められた．RV-TEI indexはPVRとMPAPと弱い相関（r=0.47 P=0.019，r=0.47 P=0.017）が認められた．
【考察】
心エコーにおけるA’はRAPを，FACはMPAPを，S’とTAPSEはPVRを反映している可能性が示唆された．
【結語】
肺高血圧症の病態把握に心エコー図における右心機能指標による評価が有用であると思われた．