三好 宏和, 大石 佳史, 水口 幸生, 井内 新, 長瀬 教夫, 大木 崇

Hirokazu MIYOSHI, Yoshifumi OISHI, Yukio MIZUGUCHI, Arata IUCHI, Norio NAGASE, Takashi OKI

国立病院機構東徳島医療センター循環器内科

Cardiovascular Section, Higashi Tokushima Medical Center, National Hospital Organization

キーワード :

【背景】
我々は，asymptomatic高血圧例（E/A＜1）において，収縮期血圧（SBP）上昇の独立規定因子は左房拡張期stiffness〔（E/e’）/S-LAs〕と左室拡張期stiffness（E/e’）の増大であることをすでに報告した〔E；僧帽弁口血流速波形（TMF）の拡張早期波高，e’； 僧帽弁輪運動速波形（MAMV）の拡張早期波高，S-LAs；収縮期左房最大strain〕．
【目的】
2-Dスペックル・トラッキング（2DST）法を用い，高血圧症における左房拡張期stiffnessと左房リモデリングとの関連について検討した．
【方法】
asymptomatic高血圧患者92例を左房容積係数（LAVI）32ml/m²未満（左房正常群）（46例；67±10歳）とLAVI 32ml/m²以上（左房拡大群）（46例；67±11歳）の2群に分類した．2DST法から得られた左房・左室機能各指標を用い，2群間における左房−左室連関の差異について検討した．
【結果】
左房拡大群では左房正常群に比べて，body mass index（BMI），左室拡張末期中隔厚（VSth），左室拡張末期後壁厚（PWth），左室心筋重量係数（LVMI），左房拡張期stiffnessが有意に高値であった．左房正常群では，左房拡張期stiffnessが，年齢，BMI，SBP，左室拡張末期径，左室収縮末期径，VSth，PWth，relative LV wall thickness（RWT），左室駆出率，TMFの心房収縮期波高（A），MAMVの収縮期波高（s’），収縮期左室最大radial strain，拡張早期左室最大longitudinal strain rateと有意な相関を認め，重回帰分析ではSBPが左房拡張期stiffnessの独立規定因子であった．左房拡大群では，左房拡張期stiffnessが，年齢，VSth，PWth，RWT，s’，MAMVの心房収縮期波高（a’），収縮期左室最大longitudinal strain およびstrain rate，心房収縮期左室最大radial strain rateと有意な相関を認め，重回帰分析では年齢，s’，心房収縮期左室最大radial strain rateが左房拡張期stiffnessの独立規定因子であった．
【結論】
高血圧患者における左房拡張期stiffnessの増大は，左房リモデリングの進展に応じて，年齢，左室収縮および拡張機能異常の関与がより重要であると考えられた．