Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
循環器:血管

(S641)

エコーガイド下橈骨動脈アプローチで血栓吸引を施行した急性上腕動脈血栓症の一例

A case of acute upper limb ischemia undergoing echoguided percutaneous thrombectomy via radial artery

谷地 繊, 藤井 大輔, 綾部 征司

Sen YACHI, Daisuke FUJII, Seiji AYABE

東京厚生年金病院循環器内科

Department of Cardiology, Tokyo Kosei Nenkin Hospital

キーワード :

【症例】
80代女性
【現病歴】
慢性心房細動と高血圧で近医通院中であった.11月下旬17時頃,自宅で突然右上肢のしびれと冷感を自覚し,1時間経過後も症状軽快しないため救急要請して当院受診となった.
【入院時現症と経過】
意識清明,血圧120/80mmHg, 心電図で心房細動(心拍数120/分)を認めた.右上腕から前腕のしびれと冷感を認め,右橈骨・尺骨動脈および上腕動脈の触知は不良であった.救急外来でエコーを施行したところ,上腕動脈に長さ3cmにわたる血栓閉塞を認め,急性上腕動脈血栓塞栓症と診断した.来院時運動障害や手指のチアノーゼは認めず,入院の上ヘパリン持続点滴したところ,末梢の感覚障害は軽度改善を認めた.さらなる血流の改善を期待し,翌日経皮的血栓吸引術を施行した.右大腿動脈アプローチで右上腕動脈へのカテーテル挿入を試みたが,右腕頭動脈の蛇行が著しくカテーテルをすすめることが困難であったため,エコーガイド下で橈骨動脈を穿刺し,逆行性に上腕動脈へカテーテルをアプローチした.シースは5Frショートシースを使用し,5Frストレートカテで病変部までアプローチして血栓吸引を行った.血管造影で右上腕動脈の血流は再開し,右上肢のしびれと冷感も著明に改善した.翌日施行したエコーで,右上腕動脈の血栓吸引部位に4cmにわたり解離があることが判明したが,末梢のしびれや冷感はほぼ改善しており,ワーファリン再開の上,経過観察とした.1週間後のエコーでは偽腔は血栓閉塞しており,末梢への血流は改善していた.末梢手指の感覚障害は著明に改善し,第16病日に退院となった.
【考察】
上肢急性動脈閉塞は下肢急性動脈閉塞に比べ発生頻度は低く,下肢に比べて側副血行路も発達しているため末梢手指の虚血症状も現れにくい.しかし急性の虚血症状を認めた場合は外科的血栓塞栓除去術,経カテーテル的血栓吸引・溶解療法が有効と報告されている.本症例では,橈骨動脈の触知は不良であったがエコーガイド下に穿刺に成功し,カテーテル的血栓吸引術を施行し,血流の改善を得た.上肢急性動脈閉塞は高齢者に多く発症する.本症例のように血管の動脈硬化や蛇行により大腿動脈からの上肢へのアプローチが困難な症例には,エコーガイド下での橈骨動脈逆行性アプローチが有用であると考えられた.