葛西 智子¹, 大平 里佳¹, 菅原 亜紀子¹, 三上 秀光¹, 伊藤 真理子¹, 篠崎 毅², 鈴木 博義¹

Tomoko KASAI¹, Rika ODAIRA¹, Akiko SUGAWARA¹, Hidemitsu MIKAMI¹, Mariko ITO¹, Tsuyoshi SHINOZAKI², Hiroyoshi SUZUKI¹

¹仙台医療センター臨床検査科, ²仙台医療センター循環器科

¹Department of Clinical Labolatroy, Sendai Medical Center, ²Department of Cardiovascular Medicine, Sendai Medical Center

キーワード :

【目的】
骨盤内腫瘤による静脈系の圧迫は下肢静脈血栓（DVT）を引きおこすことが報告されているが，如何なる大きさの腫瘤がDVTの形成に関連するのか不明である．本研究の目的は，骨盤腔における子宮筋腫径と症候性DVT発生率の関係を明らかにすることである．
【方法】
平成19年1月1日から平成23年3月1日まで，当院において子宮筋腫摘出術を施行した連続727例の中で，症候性DVTを併発していた6例を解析した．血液凝固異常，悪性疾患，妊娠，卵巣嚢腫，骨盤内炎症性疾患，ステロイド使用，骨盤外傷を有する症例は除外した．子宮筋腫径はMRI，または，CTの水平断画像から計測した．単発性子宮筋腫の径は骨盤腔内における最大径と定義した．多発性子宮筋腫の径は複数の子宮筋腫が形成する骨盤内構造の最大径と定義した．子宮筋腫摘出術施行例と症候性DVT症例における子宮筋腫径ごとの度数分布を作製し，階級ごとの症候性DVT発生率を算出した．
【結果】
子宮筋腫径が5 cm未満，5 cm以上−10 cm未満，10 cm以上−15 cm未満，15 cm以上−22 cm未満のそれぞれの階級における子宮筋腫全患者数はそれぞれ，98人，422人，181人，26人，症候性DVTを併発していた症例数はそれぞれ，0人，2人，3人，1人，症候性DVT発生率はそれぞれ，0％，0.5％，1.7％，3.9％であった．
【結論】
子宮筋腫径が5 cmを越えると，子宮筋腫径に依存して症候性DVT発生率が上昇する．子宮筋腫径は症候性下肢静脈血栓の新しいリスク因子かもしれない．