Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
循環器:血管

(S639)

当院における下肢静脈エコー

Characteristics and findings of patients who underwent ultrasonography of lower extremity vein in our hospital

松田 尚1, 中川 正康2, 小林 希予志1, 渡辺 栄里1, 鎌田 ななみ2, 柴原 徹2, 藤原 敏弥2, 鬼平 聡3, 伊藤 宏4

Sho MATSUDA1, Masayasu NAKAGAWA2, Kiyoshi KOBAYASHI1, Eri WATANABE1, Nanami KAMADA2, Toru SHIBAHARA2, Toshiya FUJIWARA2, Satoshi KIBIRA3, Hiroshi ITOU4

1市立秋田総合病院超音波センター, 2市立秋田総合病院循環器内科, 3きびら内科クリニック循環器内科, 4秋田大学医学部内科学講座循環器内科分野

1Center of Dignostic Ultrasound, Akita City General Hospital, 2Department of Cardiology, Akita City General Hospital, 3Department of Cardiology, Kibira Medical Clinic, 4Department of Cardiology, Akita University

キーワード :

【はじめに】
下肢静脈エコーは多くの施設で実施されているが,その依頼状況,結果の報告,所見のあった場合の対応は各施設によって異なると思われる.今回当院の下肢静脈エコーの実施状況,依頼項目,検査後の対応について検討を行ったので報告する.
【対象】
2011年11月から2012年10月までの1年間に依頼のあった下肢静脈エコー461件中,期間内の再検査を除いた447件について依頼科,依頼目的,検査所見,その後の対応について調査した.
【結果 入院・外来別】
外来は185件,入院が262件であった.
【結果 性別】
男性は91件,女性が356件であった.
【結果 依頼科別】
産婦人科216件,循環器内科64件,消化器内科 56件,整形外科28件,血液内科24件,心臓外科22件,外科14件,泌尿器科10件,精神科8件,小児科3件,耳鼻科1件,麻酔科1件であった.
【結果 依頼目的】
下肢腫脹:69件,産婦人科術前(悪性疾患):56件,産婦人科術後(悪性疾患):46件,消化器内科術前(悪性疾患):40件,悪性疾患で手術不能例:38件,妊娠:38件,整形術前:26件,長期臥床:20件,産婦人科術前(良性疾患):16例,下肢静脈瘤:15件,DVTの既往(一年以上前):11件,消化器術前(良性疾患):9件,産婦人科術後(良性疾患):6件,肺塞栓症:6件,消化器内科術後(悪性疾患):5件,整形外科術後:4件,泌尿器術後(悪性・良性疾患):3件,術後酸素飽和度低下:3件,ネフローゼ症候群:3件,敗血症:3件,脱水:3件,急性大動脈解離:3件,外科術前(悪性・良性疾患):2件,蜂窩織炎:2件,その他:20件であった.
【結果 血栓の部位別】
膝窩から総大腿静脈:5例(内,外腸骨静脈から下大静脈まで連続して血栓あった症例が3例.この3例中腎静脈まで一部到達しているものが 1例,エコーでは不明瞭だがCTで腎静脈まで達しているものが 1例),膝窩静脈:5例,浅大腿から総大腿静脈:3例(内,中心静脈カテーテル留置部に血栓を認めた症例が2例),総大腿静脈:4例,下腿から浅大腿静脈:4例,その他の静脈血栓(ヒラメ静脈,脛骨静脈など):31例と合計52例に血栓が認められた.
【結果 Dダイマーより】
当院の基準値(<0.5/ml)より高値(0.51〜113.49/ml)は354件,正常範囲55件,未測定38件.3例においてDダイマーが正常範囲内で血栓を認めたが,その血栓の部位としては両側の膝窩から浅大腿静脈1例,右側の膝窩静脈1例,左側大伏在静脈1例であった.いずれも器質化し,血管も萎縮傾向にあった.また膝窩から浅大腿静脈1例と右側の膝窩静脈1例は血栓内部にスパイラル状に血流が認められた.
【治療】
血栓を認めた例では下大静脈フィルター留置を6例に施行,ほとんどの患者で抗凝固療法が施行された.
【今後の課題として】
致命的な肺血栓塞栓症になりうる下肢深部静脈血栓を確認した場合,いかに短時間で治療を行えるか各科医師との連携を深めていくことが必要と思われた.Dダイマーは特に血栓の否定に有用な指標であるが,Dダイマー陰性でも血栓の存在する例が少数ながら認めたため注意を要すると考えられた.
【まとめ】
術前後の長期臥床や下肢の腫脹などの場合,下肢深部静脈血栓から肺血栓塞栓症を起こすリスクは非常に高くなる.Dダイマー高値で下肢深部静脈血栓を否定することができない場合,非侵襲的な下肢静脈エコーは必要不可欠であると考えられた.また致命的な肺血栓塞栓症をきたしうる下肢深部静脈血栓を確認した場合により迅速に対応するために,院内マニュアルのさらなる徹底が重要と考えられた.