Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
基礎:デバイス・診断システムⅡ

(S634)

速度プロファイル評価のためのドプラファントム製作

Fabrication of Doppler phantom for evaluation of velocity profile

長谷川 智仁1, 入江 喬介1, 近藤 祐司2

Tomohito HASEGAWA1, Takasuke IRIE1, Yuji KONDO2

1マイクロソニック株式会社技術開発部, 2東北大学大学院工学研究科電子工学専攻

1Research and Development, Microsonic Co.,Ltd., 2Graduate School of Engineering Department of Electronic Engineering, Tohoku University

キーワード :

【背景と目的】
現在,カラードプラを含むドプラ性能の評価にはフローファントムと糸ファントムの2種類のドプラファントムが使用されている.フローファントムは,生体模擬媒体中で疑似血液をポンプにより循環させるものでドプラ感度評価に用いられるが,流体速度を厳密に規定することが難しく速度の定量評価には向いていない.一方糸ファントムは,水中に張った糸をモーターで回転させる方式で,糸の速度が既知となるので速度評価に適しているが,反射強度の調整が難しく感度測定には向いていない.現在市販されている糸ファントムは測定対象として1本の糸を水中で回転させるため,血管内の血流速度に分布がある場合など,血流プロファイルの検出精度を定量的に評価することができない.そこで,本研究では速度の異なる測定対象を定量的に評価するためのドプラファントムを製作した.多重に糸を張り,かつ糸ごとに速度を異ならせることにより,深さ方向に異なる速度分布を同時観測可能とした.カラードプラの空間分解能の評価や微小位相変位計測における空間精度評価への利用が期待される.
【方法】
製作した糸ファントムの写真をFig.1に示す.直径約0.06 mmのポリエステル製の糸を5 mm間隔で4本張り,ステッピングモータにより糸を駆動する.ステッピングモータに接続される糸駆動用プーリーの直径を15, 18, 20, 28 mmとすることで,各々の糸の速度に分布を持たせた.実験では,糸の速度を超音波プローブに対して近い方から100, 115, 83, 111 mm/sで駆動させ,市販の超音波診断装置を用いてカラードプラモードで速度プロファイルの検出精度と空間分解能の性能評価を行った.
【結果と考察】
今回の実験では,カラードプラモードで速度プロファイル検出精度と空間分解能の評価を行うことで,製作した糸ファントムによりドプラ性能の評価を行うことの有効性を確認した.その結果,速度プロファイル検出精度では,各々の糸が異なる速度として検出可能であり,糸速度の条件を変更することにより,1本の糸を使用する糸ファントムやフローファントムでは測定することが困難であった速度プロファイルの検出精度を定量的に評価することが可能となった.しかし,空間分解能においては,糸間隔が5 mmと広く糸と糸が完全に分解可能であったため,空間分解能の評価は十分に行うことができなかった.今後,糸間隔を狭くするとともに糸の数を増やしドプラ性能評価を行う予定である.