Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科

(S630)

皮膚病変のない乾癬性関節炎の診断に関節超音波検査は有用である

Ultrasound and Power Doppler Evaluation is useful for diagnosis of Psoriatic Arthritis without skin lesion

武田 節子1, 小池 達也2, 岡野 匡志3, 多田 昌弘3, 杉岡 優子3, 真本 建司3, 神山 敦子3, 橋本 あゆみ1, 髭野 泰博1, 中村 博亮3

Setsuko TAKEDA1, Tatsuya KOIKE2, Tadashi OKANO3, Masahiro TADA3, Yuuko SUGIOKA3, Kenji MAMOTO3, Atsuko KAMIYAMA3, Ayumi HASHIMOTO1, Yasuhiro HIGENO1, Hiroaki NAKAMURA3

1公立大学法人大阪市立大学医学部附属病院中央臨床検査部, 2公立大学法人大阪市立大学大学院医学研究科リウマチ外科学, 3公立大学法人大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学

1Central Clinical Laboratory, Osaka City Univercity Hospital, 2Department of Rheumatosurgery, Osaka City Univercity Medical School, 3Department of Orthopeadic Surgery, Osaka City Univercity Medical School

キーワード :

【背景】
乾癬性関節炎は皮膚の慢性炎症性疾患である乾癬に伴う炎症性関節炎であり,乾癬患者の10〜30%に合併する.そのうち約70%では皮膚病変が先行するため診断がつきやすいが,15%程度は皮膚症状を伴わず,関節炎のみが先行して出現するため,他の疾患との鑑別診断に難渋することがある.今回われわれは皮膚病変のない診断未確定関節炎患者において関節超音波検査が診断の一助となった乾癬性関節炎の2例を経験したので報告する.
【症例1】
48歳女性.2年前から爪の変形と両手指遠位指節間関節(以下DIP関節)に疼痛と腫脹が出現.他院で変形性関節症と診断され,非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を処方され経過観察されていた.疼痛の増悪とDIP関節の可動域制限が出現したため当院を受診した.来院時両手指DIP関節に発赤・腫脹と圧痛を認めたが,乾癬を疑わせる皮疹は認められなかった.血液検査では炎症反応の上昇は認められず,自己抗体も陰性であった.単純X線検査ではDIP関節に骨びらんを認め,関節超音波検査では罹患DIP関節に滑膜肥厚と血流シグナルの増加を認めた.
【症例2】
65歳女性.慢性閉塞性肺疾患(COPD)で当院呼吸器内科通院中に両手指DIP関節の疼痛と腫脹が出現し,当科を紹介受診となった.乾癬を疑わせる皮疹は認めず,血液検査では軽度炎症反応を認めるものの自己抗体はすべて陰性であった.単純X線検査ではDIP関節の破壊を認め,関節超音波検査では罹患DIP関節に「症例1」と同様滑膜肥厚と血流シグナルの増加を認めた.
【経過】
臨床症状および画像診断から両症例とも皮疹を認めないものの乾癬性関節炎と診断し,メトトレキセートによる治療を開始した.症例1では治療中に乾癬に特徴的な皮疹が出現した.治療開始後2例とも疼痛や腫脹などの臨床症状は軽快傾向であり,関節超音波検査においても滑膜の肥厚は軽減し,血流シグナルも減少している.
【考察】
皮膚病変を伴わない乾癬性関節炎では,DIP関節の罹患を特徴とする変形性関節症等との鑑別が困難な場合があり,診断や治療が遅れる可能性がある.近年高周波の超音波装置の登場によりDIP関節のような小関節でも関節内の病態を詳細に観察できるようになった.関節超音波検査は本症例のように皮膚病変の先行しない乾癬性関節炎の診断の一助になり得ることが示唆された.