Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科

(S630)

下肢人工関節置換術周術期における深部静脈血栓症の検討

Analysis of Perioperative Deep Vein Thrombosis in joint replacement of the lower extremities

田端 強志1, 中島 新2, 高橋 修1, 金 徳男1, 柴田 孝史2, 園部 正人2, 清水 一寛3, 中川 晃一2, 東丸 貴信3

Tsuyoshi TABATA1, Arata NAKAJIMA2, Osamu TAKAHASI1, Tokuo KON1, Takashi SHIBATA2, Masato SONOBE2, Kazuhiro SHIMIZU3, Kouichi NAKAGAWA2, Takanobu TOMARU3

1東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理機能検査部, 2東邦大学医療センター佐倉病院整形外科, 3東邦大学医療センター佐倉病院循環器センター

1Depertment of Clinical Physiology, Toho University Medical Center Sakura Hospital, 2Depertment of plastic surgery, Toho University Medical Center Sakura Hospital, 3Depertment of Cardiovascular Center, Toho University Medical Center Sakura Hospital

キーワード :

【目的】
深部静脈血栓症(以下DVT)や肺塞栓症は周術期における重大な合併症であり,特に整形領域の人工関節置換術後は高リスク群に分類されている.当院では下肢人工関節置換術において術前,術直後,2週間後と下肢静脈エコーを周術期に3回施行しており,DVTの早期発見に努めている.今回我々は,当院での人工関節置換術周術期におけるDVTの検討を行なったので報告する.
【対象】
2011年3月から2012年7月に人工関節置換術を施行した83例中,術前の超音波検査でDVTを認めなかった連続75例.人工股関節全置換術(THA):11例,人工膝関節全置換術(TKA):55例,人工膝関節単顆置換術(UKA):9例
【プロトコール】
術前(平均5.6日前)に下肢静脈エコーと血液検査(Dダイマー,ヘマトクリット,ヘモグロビンなど)を施行.また,術直後(平均2.6日後)と2週間後(平均14.4日後)も同様の検査を施行.
【方法】
下肢静脈エコー検査の観察部位は左右腸骨静脈から下腿静脈まで.検査体位は仰臥位,膝下は外旋位や立て膝で施行した.血栓の確認は断層法での圧迫法やカラードプラを用いたミルキング法で評価した.
【結果】
術直後に血栓を認めたのは19例(25%),血栓部位はすべて下腿で18例(94%)はひらめ静脈の単発型であった.また,術側血栓は13例(68%),反対側血栓は4例(21%),両側血栓は2例(10%)であった.2週間後に血栓を認めたのは26例(35%),血栓部位はすべて下腿で23例(88%)はひらめ静脈の単発型であった.術側血栓は19例(73%),反対側血栓は4例(15%),両側血栓は3例(12%)であった.
また,今回我々は術前から,術直後,2週間後にかけて血栓を認めなかったDVT(−)群,
術直後は血栓を認めなかったが,2週間後に血栓を認めたA群,
術直後から2週間後にかけて血栓を認めたB群,
術直後に血栓を認めたが,2週間後に消失したC群に分け各群間での比較・検討を行なった.
DVT(−)群:45例,A群:11例,B群:15例,C群:4例であった.平均年齢においてDVT(−)群とA群間に有意差を認めたが(P<0.01),BMIや術式,術側など有意差は認めなかった.Dダイマーは術前から直後,2週間後と各群同様に推移し有意差は認めなかった.ヘマトクリットやヘモグロビンも同様で各群間に有意差は認めなかった.
【まとめ】
1)人工関節置換術周術期におけるDVTの発生頻度は術直後25%,2週間後35%であり,すべて下腿血栓で90%がひらめ静脈の単発型,70%は術側血栓であった.
2)4群間でのDダイマー,ヘマトクリット,ヘモグロビンは周術期において血栓の有無に関係なく各群同じ推移を示し,各群間での有意差は認めなかった.
【結語】
超音波検査で周術期に繰り返し検査することで早期にDVTを発見し,血栓の増大を防ぐことで肺塞栓予防につながると思われる.