Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科

(S628)

パワードプラ陽性滑膜炎は臨床的寛解状態にあるRA患者でも高率に存在する

Power Doppler signal is frequently positive among patients with rheumatoid arthritis in clinical remission

橋本 あゆみ1, 小池 達也3, 岡野 匡志2, 多田 昌弘2, 杉岡 優子2, 真本 建司2, 神山 敦子3, 武田 節子1, 髭野 泰博1, 中村 博亮2

Ayumi HASHIMOTO1, Tatsuya KOIKE3, Tadashi OKANO2, Masahiro TADA2, Yuko SUGIOKA2, Kenji MAMOTO2, Atsuko KAMIYAMA3, Setsuko TAKEDA1, Yasuhiro HIGENO1, Hiroaki NAKAMURA2

1公立大学法人大阪市立大学医学部附属病院中央臨床検査部, 2公立大学法人大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学, 3公立大学法人大阪市立大学大学院医学研究科リウマチ外科学

1Central Clinical Laboratory, Osaka City University Hospital, 2Department of Orthopaedic Surgery, Osaka City University Medical School, 3Department of Rheumatosurgery, Osaka City University Medical School

キーワード :

【目的】
関節リウマチ (RA) における関節超音波検査において,パワードプラ (PD) 陽性滑膜は関節破壊の進行につながる可能性が示唆されている.実臨床においては,臨床的寛解状態でも関節破壊の進行が認められるケースがあり,そこには活動性の滑膜炎が残存している可能性がある.今回われわれは臨床的寛解患者における活動性滑膜炎の有病率について検討し,それに関連する要因を検討することを目的とした.
【対象】
当院通院中のRA患者のうち臨床的寛解状態 (DAS28-CRP<2.6) にある89例 (女性76例・男性13例)を対象とした.
【方法】
関節超音波検査を 34カ所 (両側手指第1-5MCP関節,母指IP関節・第2-5PIP関節,手関節橈側・正中・尺側,足趾第2-5MTP関節) に施行した.各部位においてBモードおよびPDシグナルを0-3の半定量法で評価し,PD陽性関節を有する割合とPD陽性関節の有無に関連する項目についての解析を行った.
【結果】
平均年齢は55.8±11.9歳,RA罹病期間は12.3±10.7年,疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)のみの患者が42例 (47.2%)・生物学的製剤使用患者が47例 (52.8%) であった.いずれかの関節にGrade1以上のPD陽性関節を有する患者は77例 (86.5%) に認められた.PD陰性例12例中9例は生物学的製剤使用患者であった.PD Grade2以上の患者は35例 (39.3%) と高率に認められ,Grade3の活動性滑膜炎を有する患者も5例 (5.6%) あった.多変量解析では,血清MMP-3値とTotal BモードスコアがTotal PDスコアに影響を与える因子として抽出された.
【考察】
今回の検討から臨床的寛解状態にある患者にもPD陽性滑膜が高率に存在するという結果が得られ,臨床的寛解状態でも関節破壊が進行する可能性が懸念される.PD陰性患者のなかではDMARDsのみで治療されている患者の割合が少なく,生物学的製剤の投与によってより深い寛解状態が得られていることがわかった.
【結論】
パワードプラ陽性滑膜炎は臨床的寛解状態にあるRA患者でも高率に存在することがわかり,臨床的寛解状態においても,病勢確認のための関節超音波検査による定期的な観察の必要性を感じた.また,活動性滑膜炎の残存と関節破壊の進行については今後経過を追跡していく予定である.