Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
頭頸部:頭頸部

(S626)

徐脈時のCerebral autoregulationの維持:経頭蓋ドプラ法による中大脳動脈血流速の検討

The Control of the Cerebral Autoregulation-Using Transcranial Doppler measurement of middle cerebral artery blood flow velocity-

上田 宏昭1, 茅野 博行2, 土至田 勉2, 小林 洋一2, 上田 正昭1

Hiroaki UEDA1, Hiroyuki KAYANO2, Tutomu TOSHIDA2, Youichi KOBAYASHI2, Masaaki UEDA1

1等々力診療所内科, 2昭和大学医学部内科学講座循環器内科学部門循環器科

1Internal Medicine, Todoroki Shinryoujyo, 2Division of Cardiology, Department of Medicine, Showa University School of Medicine

キーワード :

【目的】
経頭蓋カラードプラ法を用いペースメーカーの非作動時(徐脈時) と作動時での中大脳動脈血流を計測し,徐脈と徐脈改善時での脳血行動態を比較,徐脈性不整脈患者の徐脈時におけるCerebral autoregulationの維持機構を検討した.
【対象および方法】
対象は体外式ペースメーカー (VVI)を挿入した徐脈性不整脈患者 5例.方法は体外式ペースメーカーの非作動時 (徐脈時) と作動時(設定心拍数:60/min,100 /min)に経頭蓋カラードプラ法を用い中大脳動脈カラードプラ像を描出し,パルスドプラ法で血流波形を記録,収縮期,拡張期,平均血流速度を測定した.また,末梢血管抵抗の指標であるPulsatility index(PI)[PI=(収縮期血流速度−拡張期血流速度)/平均血流速度]とResistance index(RI)[RI=(収縮期血流速度−拡張期血流速度)/収縮期血流速度]を算出した.ドプラ心エコー図法で大動脈内血流速度と大動脈径より一回拍出量と心拍出量を算出,マンシエット法で血圧を測定し,非作動時 (徐脈時) と作動時(設定心拍数:60/min, 100 /min)でと中大脳動脈血流速度,心血行動態の指標として血圧,心拍出量,一回拍出量と対比した.
【結果】
①血圧の変化:収縮期血圧(mmHg)は非作動時(徐脈時: 126.0±21.1) と作動時:(設定心拍数: 60/min, 100 /min: 128.6±27.5, 134.0±18.3)に有意差は認めず,拡張期血圧(mmHg)は非作動時(徐脈時: 70.2±11.5) 作動時:(設定心拍数: 60/min, 100 /min: 72.4±10.5, 72.9±10.3)に有意差は認めなかった.②中大脳動脈血流の解析:収縮期血流速度(m/sec)は非作動時(徐脈時: 1.0±0.24)と作動時:(設定心拍数: 60/min, 100 /min: 1.2±0.3, 1.0±0.2)に有意差は認めず,平均血流速度(m/sec)も非作動時(徐脈時: 0.5±0.1)と作動時:(設定心拍数: 60/min, 100 /min: 0.8±0.2, 0.6±0.1)に有意差を認めなかった.しかし,拡張期血流速度(m/sec)は非作動時(徐脈時: 0.3±0.1)は作動時:(設定心拍数: 60/min, 100 /min: 0.5±0.2, 0.4±0.1)に比べ有意差(p=0.008)をもって減少した.PIは有意差を認めないものの非作動時(徐脈時: 1.2±0.1)は作動時:(設定心拍数: 60/min,100 /min: 1.0±0.1, 0.9±0.2)に比べ高値であった.また,RIも有意差を認めないものの非作動時(徐脈時:0.7±0.1)は作動時:(設定心拍数: 60/min, 100 /min:0.6±0.1, 0.6±0.1)に比べ高値であった.③心血行動態の変化:一回拍出量(ml)は,非作動時(徐脈時: 101.1±27.3)はであり,作動時:(設定心拍数: 60/min, 100 /min: 119.1±20.4, 104.3±19.7)とは変化を認めなかった.しかし,心拍出量(/min))は,非作動時(徐脈時: 4.0±1.1l はであったが,作動時(設定心拍数:60/min, 100 /min: 7.1±1.2l,10.4±2.0l) と,心拍数の増加とともに有意に増加を認めた(p<0.05〜p<0.01).
まとめ:①ペースメーカーの非作動時と作動時では収縮期・拡張期血圧に有意差は認めなかった.②ペースメーカーの非作動時(徐脈時)は,作動時に比べ中大脳動脈の拡張期血流速度の有意な減少,および有意差は認めないもののPI・RIの増加を認めた.③一回拍出量には変化を認めなかったが,心拍出量は心拍数の増加とともに有意に増加を認めた.
【結語】
ペースメーカーの非作動時(徐脈時)は作動時に比べ収縮期・拡張期血圧に低下はなく,また,ぺーシングによっても血圧の上昇は認めないため,非作動時(徐脈時)の脳血流の減少は脳灌流圧の下降によるものではないと考えられた.また,非作動時(徐脈時)には中大脳動脈の拡張期血流速度の有意な減少,および有意差は認めないもののPI・RIの増加を認めたことにより,中大脳動脈では末梢血管抵抗を増大させることによりCerebral autoregulationを維持させることが示唆された.