Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
血管:血管

(S619)

CardioHealth Stationを用いたIMT計測の精度管理に対する検討

Study on quality control of IMT measurement using CardioHealth Station

濱口 浩敏1, 福住 典子2, 高坂 仁美2, 渡辺 良信3, 松尾 汎4

Hirotoshi HAMAGUCHI1, Noriko FUKUZUMI2, Hitomi KOUSAKA2, Yoshinobu WATANABE3, Hiroshi MATSUO4

1神戸大学医学部附属病院神経内科, 2神戸大学医学部附属病院検査部, 3パナソニックヘルスケア株式会社画像診断事業開発チーム, 4松尾クリニック内科

1Department of Neurology, Kobe University Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, Kobe University Hospital, 3Medical Imaging Marketing Team, Panasonic Healthcare Co., Ltd., 4Internal medicine, Matsuo Clinic

キーワード :

【目的】
頸動脈エコーにおけるIMT計測は,動脈硬化の評価や治療効果判定に頻用されているが,その精度についてはあまり議論されていない.実際の現場では,装置に備えつけられたトラックボールを用いてIMT計測を行うことが多いが,例え明瞭な画像を描出できたとしても,検者の技量のみならず装置,条件設定,視野深度,プローブ形状,トラックボールのなめらかさなどによって数値が容易に変化する.これら主観的な操作での数値ではなく,客観性を持たせる方法として自動計測法があるが,一般的に普及しているわけではなく,その精度についても明瞭な画像を提示することが最低条件といえる.今回我々は,CardioHealth Station(以下CHS)を用いてIMTファントムモデルの自動計測を行い,既存の超音波装置におけるIMT自動計測および手動計測と比較検討した.
【対象・方法】
IMTファントムモデルとしては,シリコンゴムの性状をと厚みを調節し,IMT理論値0.835mmとなるように設計した.このIMTファントムモデルを用いて,3名の検者(超音波専門医1名,血管超音波検査士2名)が,CHSにおけるIMT計測(PURE IMT),既存の超音波装置(日立アロカメディカル社α7,α10)におけるIMT計測をそれぞれ行った.α7については自動計測および手動計測,α10については手動計測で計測を行った.CHSは心拍同期により自動フリーズとなるが,ファントム実験の際は手動フリーズで対応した.評価は max IMT,mean IMTの両者で行い,各々50回ずつ連続計測を行った.
【結果】
3名の結果をそれぞれ示す.CHSについて,平均max IMTは(0.858±0.034,0.846±0.025,0.870±0.033)mm,平均mean IMTは(0.809±0.027,0.810±0.031,0.820±0.022)mmであった.α10手動計測での平均max IMTは(1.005±0.058,1.064±0.079,1.033±0.051)mm,平均mean IMTは(0.956±0.050,0.996±0.063,0.984±0.040)mm,α7手動計測での平均max IMTは(0.981±0.066,1.025±0.062,1.056±0.052)mm,平均mean IMTは(0.946±0.055,0.980±0.056,1.013±0.049)mm,自動計測での平均max IMTは(1.041±0.101,1.141±0.136,1.073±0.107)mm,平均mean IMTは(0.957±0.063,1.029±0.101,0.980±0.076)mmであった.CV値は汎用機よりもCHSの方が低い結果であった.
【考察】
従来のIMT計測は,手動計測,自動計測とも静止画像からの輝度変化をとらえることで計測を行っている.この際IMT精度におけるもっとも重要な点は,いかに全体的にきれいな画像で,輝度変化の境界面が明瞭に分かれている画像を描出できるかということに尽きる.しかし,描出された画像については装置間,検者間においてのばらつきの程度が問題となる.一方で,CHSにおけるPURE IMT法は,プローブからのRFデータ(超音波反射波)を使って,血管壁の動きをリアルタイムに解析することで,心電計を使わずに心拡張末期近傍のタイミングを自動検出しながら血管内中膜の境界を抽出し,リアルタイムでIMTを判定し,所定の条件を満たすと自動的に画像をフリーズし,即時にIMT値(Max/Mean/Min)を表示する技術であり,従来の静止画像に基づいた計測法とは違った新たな手法といえる.今回の検討では,検者間,装置間について,いずれの装置においても数値にばらつきがみられたが,CHSではよりばらつきが少ない傾向が得られた.このことは,客観性,再現性の点からも有用な手法であると考える.
【結語】
CHSによるIMT計測は,今後の精度向上に期待できる手法であると考える.