藤岡 和美¹, 大石 実², 中山 智祥¹, 藤岡 彰³

Kazumi FUJIOKA¹, Minoru OISHI², Tomohiro NAKAYAMA¹, Akira FUJIOKA³

¹日本大学医学部病態病理学系臨床検査医学分野, ²日本大学医学部内科学系神経内科学分野, ³藤岡皮フ科クリニック皮膚科

¹Division of Laboratory Medicine, Department of Pathology and Microbiology, Nihon University School of Medicine, ²Division of Neurology, Department of Medicine, Nihon University School of Medicine, ³Department of Dermatology, Fujioka Dermatology Clinic

キーワード :

【目的】
endothelial dysfunctionとsevere なchronic kidney disease （CKD）間の相関が示唆されてきている．最近では，community-based studyにおけるendothelial functionとestimated glomerular filtration rate:eGFR間の相関を示す報告が散見される．今回我々はendothelial functionとしてflow-mediated vasodilation:FMDを含むbrachial artery measuresとeGFR間に相関がみられるか否かの検討を行った．
【対象】
当院神経内科を受診した患者54人（脳梗塞14人，片頭痛11人，頸椎症5人，その他24人）いずれもeGFR＞60ml/min/1.73m² を示す症例について検討を行った．
【方法】
FMDは超音波診断装置（UNEXEF18G）を用いて，右上腕動脈にて測定した．測定方法はInternational Brachial Artery Reactivity Task Forceのガイドラインに従った．前腕駆血開放によるFMDとnitroglycerin舌下エアゾール（1噴霧0.3mg）による血管拡張nitroglycerin-mediated vasodilation:NMDを測定した．また，NMD検査時に最大拡張血管径（post-nitroglycerin brachial artery diameter:P-NTGD）の測定も行った．更にFMD/NMD ratioについても検討を加えた．一方，eGFRは日本腎臓学会の推算式を用いて行い，eGFR＞60ml/min/1.73m²症例について検討を行った．
【成績】
統計学的検討では相関の検定にSpearmanの相関係数とFisherのr to z 変換を用いp＜0.05を統計学的に有意と判定した．1）FMDとeGFRに有意な正相関を認めた（r=0.363, p=0.009）．2）Brachial artery diameter:BADとeGFR間には相関を認めなかった（r=-0.274, p=0.051）．3）P-NTGDとeGFR間には有意な逆相関を認めた（r=-0.316, p=0.025）．4）NMDとeGFR間には相関を認めなかった（r=-0.017, p=0.907）．5）FMD/NMD ratioとeGFR間には有意な正相関を認めた（r=0.354, p=0.012）．
【考察】
Severeな CKD症例は，CVD発症のhigh riskとされてきている．CKD stage 3-5（eGFR＜60ml/min/1.73m²）症例におけるCVDのincreased riskはendothelial dysfunctionに起因するとされている．しかし，community-based studiesにおけるeGFRとendothelial function間の相関の報告はほとんどなされていなかった．今回の結果より，明らかなCKDのない症例（eGFR＞60ml/min/1.73m²）においても，FMDとeGFR間の正相関，内皮機能を示すFMD/NMD ratioとeGFR間に正相関を認め，eGFRがendothelial functionを反映するmarkerとなる可能性が示唆された．
【結論】
明らかなCKDのない症例（eGFR＞60ml/min/1.73m²）においてもeGFRがendothelial functionを反映するmarkerとなる可能性が示唆された．