Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:乳腺Ⅱ

(S614)

当院におけるElasticity Score1,2を示した乳癌症例〜生検施行のきっかけとなる所見〜

How was the breast cancer showed Elasticity Score 1 or 2 diagnosed?

伊藤 吾子

Ako ITOH

日立製作所日立総合病院外科

Department of Surgery, Hitachi General Hospital

キーワード :

【はじめに】
乳腺疾患の超音波診断においてエラストグラフィ併用の有用性は明らかであるが,Score1,2を示す「やわらかい乳癌」を経験することがある.Score1,2は良性の可能性が高く,当院では腫瘤であれば原則細胞診すら不要としている.しかし,数%の乳癌症例を含むことより,生検等を考慮する必要のあるエラストグラフィ以外の所見を知ることは,偽陰性を防ぐため重要である.当院にてScore1,2を示した乳癌症例につき検討した.
【対象】
2004年7月から2011年12月までに当院にてReal-time Tissue Elastographyを併用して乳腺疾患の診断を行った2104病変(乳癌787例,良性1317例)のうちScore1,2を示した乳癌症例29例(Score1;2例,Score2;27例).
【方法】
身体所見,マンモグラフィ所見,超音波(Bモード)所見,超音波カラードプラ所見のうち細胞診,針生検等を行うきっかけとなった所見について検討した.使用機器はHITACHI EUB8500,プローブはL65M.マンモグラフィは精中委のガイドライン,超音波はJABTSのガイドラインに沿ってカテゴリー判定した.エラストグラフィはTsukuba Elasticity Scoreにて判定した.
【結果】
29例の組織型はDCIS11例,微小浸潤性乳管癌4例,浸潤性乳管癌12例,粘液癌1例,腺葉嚢胞癌1例であった.身体所見では,触知乳癌が14例,非触知乳癌が15例であり,3例に血性乳頭分泌を認めた.マンモグラフィではカテゴリー1,2が6例,カテゴリー3が9例,カテゴリー4が9例,カテゴリー5が4例,未施行1例であった.カテゴリー3-5であった22例のうち20例は石灰化病変であった.Bモードにおいて腫瘤は6例,非腫瘤性病変は23例であり,カテゴリー1,2の症例はなく,カテゴリー3が17例,カテゴリー4が10例,カテゴリー5は2例であった.カラードプラを併用した20例のうち,内部血流を認めないものは3例,spottyな血流を認めるものは5例,明らかな流入血管を認めるものは12例であった.生検的手技を行うきっかけとなった所見としては,マンモグラフィの石灰化病変と一致11例,触知+マンモグラフィの石灰化と一致7例,触診にて腫瘤を触知5例,血性乳頭分泌あり3例,カラードプラにて血流増加あり3例であった.
【考察】
乳癌にてScore1,2を呈した症例は29/787例(3.68%)であった.Score1,2であっても生検などを考慮すべき所見としてはマンモグラフィカテゴリー3以上の石灰化と一致する非腫瘤性病変が最も多く,次いで触知病変,血性乳頭分泌あり,カラードプラにて血流増加ありであった.腫瘤性病変6例のみに限れば,触診にて腫瘤を触知,触知+マンモグラフィの石灰化と一致,血性乳頭分泌ありが各々2例ずつであった.
【まとめ】
マンモグラフィカテゴリー3以上の石灰化と一致する非腫瘤性病変についてはエラストグラフィの結果にかかわらず,細胞診,針生検を行うべきである.腫瘤では超音波でカテゴリー3以上かつ触知する症例や血流豊富な症例はScore2であっても細胞診を考慮する必要がある.