太田 寿¹, 小林 薫², 大下 真紀¹, 藪田 智範², 福島 光浩², 廣川 満良⁴, 網野 信行³, 宮内 昭²

Hisashi OTA¹, Kaoru KOBAYASHI², Maki OSHITA¹, Tomonori YABUTA², Mitsuhiro FUKUSHIMA², Mitsuyoshi HIROKAWA⁴, Nobuyuki AMINO³, Akira MIYAUCHI²

¹隈病院臨床検査科, ²隈病院外科, ³隈病院内科, ⁴隈病院病理診断科

¹Department of Clinical Laboratory, Kuma Hospital, ²Department of Surgery, Kuma Hospital, ³Department of Physiology, Kuma Hospital, ⁴Department of Diagnostic Pathology, Kuma Hospital

キーワード :

【目的】
日常，頸部超音波検査において甲状腺の尾側にキラキラと微細多発高エコーがみられる場合がある．特に若年者では甲状腺周囲に近接してみられる場合が多く，非常にまれではあるが甲状腺内に結節性病変として認められる場合もある．これは胸腺組織と認識されている．甲状腺乳頭癌の特徴的所見である砂粒体と同様の所見を呈するため検証が必要と考えられる．今回我々は，甲状腺以外にみられる微細多発高エコーを示す物体を切除し，その主な要因を検討した．
【対象】
手術予定の患者の頸部超音波検査において，甲状腺の外に微細多発高エコーが観察された2名の患者を対象とした．症例1）バセドウ病　男性　36歳，　症例2）甲状腺乳頭癌　女性　38歳（患者には文書をもって了解を得た．）
【方法】
装置は，東芝Aplio500　プローブ8MHzと14MHzを使用した．術前の頸部超音波にて，甲状腺尾側に微細多発高エコーがみられた物体とその摘出組織の超音波像，摘出組織の軟Ｘ線および病理組織像を比較検討した．摘出組織の超音波撮影法は，摘出組織をファスナー付きの小さなナイロン性の袋に入れ，生理食塩水で袋内を満たした状態で袋外側にエコーゼリーを塗り，組織が動かないよう注意しながら全体を撮影記録した．B-modeとMicro Pure-modeにおいて動画で撮影した．
【結果】
1.術前，摘出後ともに超音波像は同様の微細多発高エコーを認めた．2.摘出組織の軟Ｘ線：内部に微細多発の石灰を認めた．3.病理組織HE染色：摘出した物体は胸腺であり，ハッサル小体（30〜100μm）の石灰沈着を多数認めた．
【結論】
頸部超音波検査で甲状腺の外に観察された微細多発高エコーの正体は，胸腺内に多数存在するハッサル小体の石灰沈着である可能性が高いと考えられた．