Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:甲状腺

(S610)

甲状腺領域におけるエラストグラフィー診断の有用性の検討

Utility of US Elastography for evaluation of thyroid tumor: Preliminary study

森本 由紀子1, 平井 都始子1, 山下 奈美子1, 吉田 美鈴1, 丸上 永晃1, 伊藤 高広2, 武輪 恵2, 齊藤 弥穂2, 高橋 亜希2

Yukiko MORIMOTO1, Toshiko HIRAI1, Namiko YAMASHITA1, Misuzu YOSHIDA1, Nagaaki MARUGAMI1, Takahiro ITOU2, Megumi TAKEWA2, Miho SAITO2, Aki TAKAHASHI2

1奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部, 2奈良県立医科大学放射線科

1Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University, 2Radiology, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
超音波を用いた組織弾性を画像化できるエラストグラフィー技術の出現により,硬さという新たな質的特性を非侵襲的かつ簡便に評価することが可能となった.これまで乳腺や甲状腺領域をはじめとする体表臓器で幅広く臨床応用されているが,手技依存性や定量化といった課題も指摘されている.今回我々はGE Elastography (Direct Strain Elastography)により得られたElasticity Index(半定量化法)が,甲状腺腫瘤の良悪性の鑑別診断に有用であるかを検討した.
【対象】
対象は,平成24年4月〜11月までの間に当院で甲状腺超音波検査が施行され,穿刺吸引細胞診(FNA)または手術施行され病理組織学所見が得られた甲状腺結節とした.ただし,腫瘤サイズが0.5cm未満の小さな結節や腫瘤が3cm以上深部に存在したものは除外した.さらに,腫瘤内部の2割以上の嚢胞部を有する腫瘤も除外した.最終的に26例29結節(腫瘤サイズ:6mm〜38mm,平均18mm)を検討対象とした.病理診断(乳頭癌9結節,髄様癌1結節)
【方法】
超音波装置はGE healthcare LOGIQ S8,LOGIQ E9,探触子はML6-15プローブを使用した.エラストグラフィーは皮下脂肪層,表在筋肉を含めたROIで病変が6割以下になるように設定した.検査者は熟練した5名で施行した.計測ROIは甲状腺腫瘤内部の6〜7割以上を占めるように設定し,Elastography 画像の色分布を数値化したElasticity Index(EI)を算出した.まずはElastography検査およびEI測定における再現性評価を行った.同部位(結節)を異なる二人の検査者が検査を行い,別の第3者が両画像のEIの値を測定し再現性を検討した.さらに一人の検査者の撮影画像をもとに,別の二人の測定者が同結節のEI値を算出して再現性を検討した(級内相関係数).次に病理組織学的所見をもとに良性群と悪性群に分類し,両者のEI値を統計学的に比較検討した(McNemar’s test, ROC解析).
【結果】
Elastography検査における異なる2検査者間での再現性評価はICC=0.967,異なる2測定者間での再現性評価はICC=0.995といずれも良好な信頼性を得た.一方,EIを用いた良悪鑑別評価における検討対象の内訳は,良性群16例19結節で,悪性群は10例10結節となった.良性群のEI(平均±標準偏差)は,2.2±0.8,悪性群のEIは,4.2±0.7となり,両者に統計学的な有意差(p<0.01)を認め,悪性診断におけるROC解析ではAUC(Area Under the Curve)が0.963と高い値を示した.
【考察】
甲状腺腫瘍の良悪性の鑑別診断に対するエラストグラフィーの有用性については,得られたカラー表示を緑色と青色の分布により視覚的にスコア化して評価した報告がみられる.しかし,リアルタイムに観察していると,周囲組織の状態や圧迫の微妙な変化により常に同じ分布の画像が得られるとは限らず,悪性が疑われる腫瘤のエラストグラフィー画像は青単色や青色に軽度に緑色を含むものと表現しても主観による判断が大きく,客観性や再現性に乏しいことが問題とされている.今回,Elasticity Indexを用い,腫瘤の色分布を半定量化することにより,検査者間および測定者間での良好な一致を確認できた.さらに,統計学的にも良性群と悪性群に有意差を認め,数値化することで,より客観的に腫瘤の良悪性を判断できた.今後,甲状腺領域におけるエラストグラフィー診断は甲状腺腫瘤の良悪性の判断の一助になると考えられた.