Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:甲状腺

(S609)

87例の橋本病に合併した甲状腺乳頭癌の超音波所見

Ultrasound findings of papillary thyroid cancer in 87 cases of Hashimoto’s disease

國井 葉1, 佐々木 栄司2

Yo KUNII1, Eiji SASAKI2

1伊藤病院内科, 2伊藤病院検査科

1Department of Internal medicine, Ito hospital, 2Department of pathology, Ito hospital

キーワード :

【目的】
橋本病の超音波画像は内部エコーの低下や,斑状に輝度の低下を認める.内部に分葉状構造を認めることもあり,腫瘍との鑑別がしばしば困難になることがある.今回,橋本病に合併した乳頭癌の超音波画像所見に特徴がないか検討をした.
【対象と方法】
2010年1月から6月初診のTPO抗体陽性,Tg抗体陽性の両方または片方が陽性の1920症例の橋本病(HD群)のうち,細胞診または病理で乳頭癌と診断された87例を対象とした.また,同時期にTPO抗体陰性かつTg抗体陰性で細胞診または病理で乳頭癌と診断された280例を比較対象(non-HD群)とした.各々の超音波所見を日本超音波医学会用語・診断基準委員会からだされている,甲状腺結節超音波診断基準に当てはめ,どの所見がより橋本病に特徴かを検討した.
【結果】
HD群では男性5例(5.8%),女性82例(94.2%) であるのに対し,non-HD群では男性79例(28.2%),女性201例(71.8%)とHD群で有意(χ2乗検定,p<0.0001)に女性が多かった.また,HD群の年齢中央値53歳とnon-HD群で56歳と差を認めなかった.HD群では腫瘍の形状は96%が不整,境界部は92%が不明瞭粗雑,エコーレベルは様々であったが,85%は内部エコー不均一であった.しかし,腫瘍の形状,境界の明瞭性,均質性,微細高エコー,境界部低エコー帯についてHD群とnon-HD群の間でχ2乗検定をもちいて検討をしたが,有意な差は認められなかった.HD群で2例diffuse sclerosingを認めたが,non-HD群では今回認められなかった.この2症例を除き腫瘍径の比較を行った.HD群は中央値11.5mm(4.2〜51.1),non-HD群は中央値12.9mm(2〜71.2)と有意差は認めなかった.
【考察】
HD群で女性が有意に多かったのは,橋本病自体が女性に多い疾患であるからと考える.HD群とnon-HD群で乳頭癌の超音波所見に有意な差はなにも認められなかった.橋本病で内部エコーが低下していても,ゲインを調節することにより悪性腫瘍は相対的に低エコーが評価されるものと考える.
【結論】
橋本病には4.5%の乳頭癌合併が認められた.橋本病の乳頭癌超音波所見は腫瘍の形状,境界の明瞭性,均質性において,ほとんどの症例で悪性所見を呈していた.これは,橋本病のない乳頭癌の超音波所見に相違はなかった.