Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:乳腺Ⅰ

(S608)

繊維腺腫近傍に発生した多発粘液癌の超音波所見

Ultrasonographic findings for the multiple mucinous carcinoma of the breast occurring near by fibroadenoma

櫻井 健一1, 2, 藤﨑 滋2, 長島 沙樹1, 2, 鈴木 周平1, 2, 原 由起子1, 2, 前田 哲代1, 2, 平野 智寛1, 榎本 克久1, 谷 眞弓1, 天野 定雄1

Kenichi SAKURAI1, 2, Shigeru FUJISAKI2, Saki NAGASHIMA1, 2, Shyuhei SUZUKI1, 2, Yukiko HARA1, 2, Tetsuyo MAEDA1, 2, Tomohiro HIRANO1, Katsuhisa ENOMOTO1, Mayumi TANI1, Sadao AMANO1

1日本大学医学部外科学系乳腺内分泌外科分野, 2医療法人社団藤﨑病院外科

1Division of Breast and Endocrine Surgery, Department of Surgery, Nihon University School of Medicine, 2Department of Surgery, Fujisaki Hospital

キーワード :

粘液癌は腫瘍径が小さい場合,葉状腫瘍,繊維腺腫等との鑑別が困難な場合がある.また,乳癌全体に占める頻度が3%と低く,経験することも少ないため,その存在を念頭において鑑別を行うことが重要である.我々は繊維腺腫近傍に発生し,超音波検査で鑑別が困難であった同時多発粘液癌の1例を経験したので報告する.
症例は41歳,女性.右異常乳頭分泌症を主訴に来院.乳汁の細胞診はClassIIであり,乳汁中CEAは400ng/ml以下であった.超音波検査で右CD領域に直径9mmの繊維腺腫様の腫瘍を2個認めた.そのうち1個の穿針吸引細胞診を施行したところ,ClassIIであり繊維腺腫が疑われるとの診断結果であった.1年後の超音波検査では2個の腫瘍径や性状は変化なく,経過観察となった.さらに2年後の検査で腫瘍は3個となり,腫瘍の増大傾向を認めたため,新規に発生した腫瘍に対して針生検を行った.病理組織診断は粘液癌,ER(+),PgR(+),HER-2陰性であった.全身検索を施行したところ,他臓器に明らかな転移を認めなかったため,乳房円状部分切除術+センチネルリンパ節生検術を施行.病理組織診断は2個が粘液癌(同時多発病変),1個が繊維腺腫であった.切除断端は陰性.センチネルリンパ節に転移は認めず,T2N0M0=StageIIAの診断であった.術後経過良好にて合併症なく第6病日に退院した.術後は2年間のLH-RHa投与と5年間の予定でTamoxifenの投与を施行している.術後3年6ヶ月目の現在,再発に徴候を認めていない.
粘液癌は腫瘍径が小さい場合,繊維腺腫や葉状腫瘍と画像診断上の鑑別が難しいことがある.同一領域に多発する腫瘍で,超音波所見が良性に近いものであると,どちらか片方の細胞診や針生検を行うだけで経過をみてしまうことが多い.多発病変はできるだけ,すべてについて針生検し,病理組織診断を行った後,慎重に経過を観察するべきものと思われた.