Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
体表臓器:乳腺Ⅰ

(S607)

乳管内乳頭腫の超音波所見の検討

Ultrasonographic evaluation of intraductal papilloma

奥野 敏隆1, 2, 福原 稔之1, 小西 豊1, 井芹 通子2, 曾我 登志子2, 平野 左起子2, 廣瀬 圭子2

Toshitaka OKUNO1, 2, Toshiyuki FUKUHARA1, Yutaka KONISHI1, Michiko ISERI2, Toshiko SOGA2, Sakiko HIRANO2, Keiko HIROSE2

1神戸アーバン乳腺クリニック乳腺科, 2岡本クリニック超音波室

1Department of Senology, Kobe Urban Breast Clinic, 2Department of Ultrasonography, Okamoto Clinic

キーワード :

【はじめに】
乳管内乳頭腫は良性乳腺腫瘤生検例の約5%を占め,日常診療においてよく遭遇する乳腺病変である.30から50歳に好発し,腫瘤や血性乳頭分泌といった臨床所見から乳癌との鑑別が問題となることも多い.超音波装置の進歩により乳管内の微細な病変が観察可能となり,乳頭腫と癌の鑑別が課題となっている.
【対象】
切除により診断の確定した乳管内乳頭腫 65例(以下IP群)と画像上鑑別を要した非浸潤性乳管癌 12例(以下DCIS群)を対象とした.
【方法】
Hanらの良性乳頭状病変の超音波形態分類1)に準じて超音波所見をType I. Intraluminal mass (Ⅰa. Intraductal type, Ⅰb. Intracystic type, Ⅰc. Solid type with anechoic rim), Type II. Extraductal mass, Type III.Purely solid mass, Type IV. Mixedの6型に,静止画像を見直して分類した.年齢,腫瘍径,臨床所見,手術術式,そして超音波所見と局在(中心性,末梢性)をIP群とDCIS群で比較,検討した.
【結果】
年齢はIP群で28から89歳,平均48.3歳,DCIS群で37から83歳,平均55.3歳.腫瘍径はIP群14.9±11.0 mm,DCIS群 17.1±6.7 mm.臨床所見はIP群では腫瘤22例,血性乳頭分泌38例,画像発見 5例,DCIS群では腫瘤7例,血性乳頭分泌4例,画像発見 1例であった.手術術式はIP群では乳管腺葉区域切除 34例,摘出術 26例,乳房部分切除(以下Bp) 4例,Bp+センチネルリンパ節生検(以下SN) 1例,DCIS群では乳管腺葉区域切除 1例,摘出術 1例,Bp 3例,Bp+SN 7例であった.超音波所見はIP群でType I 37例 (64%)(Ⅰa 20例,Ⅰb 11例,Ⅰc 6 例),TypeⅡ 8例 (14%),Type III 13例 (22%),Type Ⅳ なし,DCIS群でType I 6例 (50%)(Ⅰa 2例,Ⅰb 2例,Ⅰc 2例),TypeⅡ なし,Type III 3例 (25%),Type Ⅳ 3例 (25%)であった.超音波で病変が同定できなかったものはIP群で7例(11%),DCIS群は全例同定可能であった.乳頭近傍の中心性,乳頭から離れている末梢性で局在を分けると,IP群で中心性28例(43%),末梢性37例(57%),DCIS群で中心性3例(25%),末梢性9例(75%)であった.臨床所見べつに超音波タイプをみると,血性乳頭分泌ではⅠa 20例(47%),Ⅱ 5例(12%),Ⅲ 5例(12%),Ⅳ 2例(5%),腫瘤ではⅠa 1例(2%),Ⅰb 9例(21%),Ⅰc 7例(17%),Ⅱ 3例(7%),Ⅲ 9例(21%),Ⅳ 1例(2%)であった.
【考察】
乳管内乳頭腫とそれらと鑑別を要する非浸潤性乳管癌を比べると,従来の報告のように乳管内乳頭腫のほうが若年で,腫瘍径が小さい傾向がみられた.臨床所見は乳管内乳頭腫では血性乳頭分泌が多く,非浸潤性乳管癌では腫瘤が多い傾向であった.超音波上の形態は,乳管内乳頭腫では乳管内腫瘤が多く,非浸潤性乳管癌で嚢胞内腫瘤や腫瘤,混合型が多くみられた.また,病変の局在をみると,乳管内乳頭腫は中心性と末梢性がほぼ同じ頻度であったが,非浸潤性乳管癌では末梢性が75%を占めた.臨床所見別に超音波形態をみると血性乳頭分泌例では乳管内腫瘤像が半数を占め,腫瘤を呈したものでは嚢胞内腫瘤像と腫瘤像を合わせると過半数を占めた.
【結語】
乳管内乳頭腫およびそれと鑑別を要する非浸潤性乳管癌の90%以上は超音波で病変の同定が可能であり,その臨床所見(血性乳頭分泌や腫瘤といった症状,年齢,局在)および超音波所見(乳管内病変や腫瘤像,腫瘤径)は病理組織像をよく反映しており,良悪性診断に有用である.
【参考文献】
1)Boo Kyung Han, Yeon Hyeon Choe, et al. Benign Papillary Lesions of the Breast Sonographic-Pathologic Correlation. J Ultrasound Med 18:217-223, 1999