Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
腎泌尿器:腎臓・後腹膜

(S604)

当院における腎充実性病変(腎細胞癌,腎血管筋脂肪腫)の超音波所見の比較検討

Comparative study of ultrasonography findings in renal lesion (renal cell carcinoma and angiomyolipoma) in our institute

内海 良太1, 石井 勝1, 小田 悠太1, 坂巻 梓帆1, 新井 悠太1, 鵜澤 綾奈1, 神作 慎也1, 小宮 雅明1, 若杉 聡2, 石田 秀明3

Ryota UTSUMI1, Masaru ISHII1, Yuta ODA1, Azuho SAKAMAKI1, Yuta ARAI1, Ayana UZAWA1, Shinya KANSAKU1, Masaaki KOMIYA1, Satoshi WAKASUGI2, Hideaki ISHIDA3

1亀田総合病院超音波検査室, 2亀田総合病院消化器診断科, 3秋田赤十字病院秋田赤十字病院超音波センター

1Divison of Ultrasonographic examination, Kameda Medical Center Hospital, 2Divison of Digestive Diagnosis Department of Internal Medicine, Kameda Medical Center Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
腹部超音波検査は,短時間に多くの臓器を検査でき,’けんしん’(検診,健診)に有用である.しかし施設によって超音波検査の質や異常所見の判定基準などが異なるのが問題である.これらの問題を解決する目的に,日本消化器がん検診学会では腹部超音波がん検診基準(以下がん検診基準)を作成した.当院でもがん検診基準を人間ドック腹部超音波検査に使用している.今回は腎の充実性腫瘍の超音波所見を検討し,がん検診基準の再評価を行った.
【対象】
対象は2009年3月から2012年2月まで,当院で診断され手術に至った腎細胞癌(以下RCC)30例と2010年12月から2012年11月までに診断され,経過観察されている腎血管筋脂肪腫(以下AML)30例である.AMLはCTまたはMRI検査のどちらかで診断され,超音波検査で1年以上大きさの変化していない症例を対象にした.
【方法】
RCC,AMLの超音波検査所見を比較検討した.検討項目は,病変の大きさ,形状,境界,内部エコーレベル,内部エコーパターン,嚢胞変性,後方エコー,境界部低エコー帯(以下halo),腎実質よりの突出像(以下hump)である.
【結果】
大きさはRCCで11〜91mm,AMLで4〜62mmであった.形状はRCCで類円形24例,分葉形5例,不整形1例,AMLでは全例で類円形であった.境界はRCCで明瞭22例,不明瞭8例,AMLでは明瞭29例,不明瞭1例であった.内部エコーレベルはRCCで高エコー12例,等エコー8例,低エコー10例,AMLでは全例で高エコーであった.内部エコーパターンはRCCで均一5例,不均一25例,AMLでは均一23例,不均一7例であった.嚢胞変性はRCCであり23例,なし7例,AMLでは全例でなしであった.後方エコーはRCCで増強10例,不変20例,AMLでは増強4例,不変26例であった.haloはRCCであり15例,なし15例,AMLでは全例でなしであった.humpはRCCで全例あり,AMLではあり9例,なし21例であった.また,AMLでhumpを認める症例はすべて10mm以上で,腫瘍径が大きいほどhumpを認める症例が多い傾向であった.
【考察】
Haloや嚢胞変性は,RCCとAMLを鑑別する上で有用な所見と考えた.現在,この2所見はがん検診基準の診断項目に記載されている.一方,現在のがん検診基準の診断項目に入っていないが,humpもAMLとRCCの鑑別に有用であった.Halo,嚢胞変性にhumpを加えれば,RCCとAMLを鑑別しやすくなる.しかしhumpを伴うAMLの否定が困難になる可能性もある.HumpはRCCの診断に有用だが,がん検診基準でどのように扱うかが問題になる.
【結語】
当院のRCCとAMLの超音波検査所見を比較検討した.RCCはAMLと比較して,内部の嚢胞変性,halo,humpの所見が多くみられた.がん検診基準の充実性腎腫瘍の診断項目にhumpの所見は記載されていないが,今後humpの所見も基準に入れることも検討すべきである.