Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
腎泌尿器:その他

(S601)

前立腺体積を考慮したUSガイド下経直腸的5領域12と18カ所生検の比較

Evaluation of US-guided transrectal 5-region 18-core prostatic biopsy in consideration of the prostate volume, compared with 12-core biopsy

徳光 正行1, 山口 聡1, 金子 茂男1, 増井 則昭1, 横田 沙緒里2, 和田 絵里2, 神崎 こずえ2, 水永 光博3, 石田 裕則1

Masayuki TOKUMITSU1, Satoshi YAMAGUCHI1, Shigeo KANEKO1, Noriaki MASUI1, Saori YOKOTA2, Eri WADA2, Kozue KANZAKI2, Mitsuhiro MIZUNAGA3, Hironori ISHIDA1

1仁友会北彩都病院泌尿器科, 2仁友会北彩都病院臨床検査科, 3仁友会泌尿器科内科クリニック泌尿器科

1Department of Urology, Kitasaito Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, Kitasaito Hospital, 3Department of Urology, Jinyukai Clinic

キーワード :

【緒言】
2012年4月刊行の前立腺癌診療ガイドライン2012年版(第二版)においては,初版同様,初回の前立腺生検は10〜12ヶ所が推奨されている.今回,当院において現在施行中であるUSガイド下経直腸的5領域18ヶ所生検の有用性について検証した.
【方法】
当院に保管されていた1995年度以降の病理組織結果報告書すべてを調査し,2012年9月までに行われた前立腺生検1,088例について,retrospectiveに検討を行った.
【結果】
当初は経会陰的6カ所が212例に,1999年度からUSガイド下経直腸的6カ所が147例に,2003年度からUSガイド下経直腸的5領域12カ所が438例に,そして2008年11月からUSガイド下経直腸的5領域18カ所が291例に施行されていた.これら4群間の年齢,PSA値の分布などの症例背景に差はなかったが,全体の癌検出率はそれぞれ35.8,49.7,55.9,56.7%と,またPSAが4〜10 ng/mlの階層における癌検出率もそれぞれ16.7,36.5,39.9,47.2%と改善傾向を示していた.PSAが20ng/ml以下の症例については,6カ所生検と12カ所以上の生検において検出率に有意差が見られた.12カ所438例と18カ所291例の2つの生検群間の背景因子においては,平均年齢72.0±8.4と72.0±8.4,PSA中央値10.4と9.1,前立腺体積39.6±23.5と40.5±24.9と,差は見られなかった.癌検出率はそれぞれ55.9%,56.7%,またinsignificant cancerの検出率はそれぞれ4.3%と5.5%と,これら両者にも差は見られなかった.しかしPSA階層別に比較すると,PSAが4〜10 ng/mlの12カ所198例と18カ所159例においては,検出率はそれぞれ39.9%と47.2%,さらにそのうち前立腺体積40cc以下の12カ所133例と18カ所108例においては,検出率は49.6%と62.0%と,18カ所生検の検出率に改善傾向が見られた(p=0.054).この12カ所133例と18カ所108例中のinsignificant cancerは,それぞれ10例(7.5%)と6例(5.6%)で,18カ所で少ない傾向がみられ,これらを除いた即時治療対象であるsignificant cancerの検出率はそれぞれ42.1,56.5%となり,18カ所生検での検出率が有意に改善していた(p=0.026).
【結論】
改訂された前立腺癌診療ガイドラインにおける初回生検推奨本数を上回る,USガイド下経直腸的5領域18カ所生検は,12カ所生検に比べ,insignificant cancerの検出率を上げることなく,特に40cc以下かつPSAが4〜10 ng/mlの症例においてのsignificant cancerの検出率の有意な向上に寄与していた.単一前立腺内においても多中心的,かつ多様な病理学的悪性度を示す前立腺癌に対して生検本数を増やすことにより,病理学的な過小評価を回避した,より正確な病理組織情報を得ることが可能となり,significant cancer検出に有用となるのではと推察された.生検針の長さを考慮したとき,経直腸的に前立腺を過不足なく生検することが可能な前立腺体積は40cc以下であるとの報告も散見され,さらに大きな前立腺に対する生検法改変も検討が必要かと考えられた.