Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
腎泌尿器:その他

(S601)

Shear Wave Elastographyを用いた前立腺組織弾性率の定量的評価

Measurement of Elastisity in the Prostate using Shear Wave Elastography

棚橋 善克1, 齊藤 幸映2, 吉田 照宏3

Yoshikatsu TANAHASHI1, Yukie SAITO2, Teruhiro YOSHIDA3

1棚橋よしかつ+泌尿器科泌尿器科, 2キヤノンライフケアソリューションズ株式会社医画像システム販売推進本部, 3キヤノンライフケアソリューションズ株式会社医画像システム販売推進本部

1Division of Genito-urinary Surgery, The Office Urology Tanahashi, 2Medical Imaging Systems Marketing Dept., Canon Lifecare Solutions Inc., 3Medical Imaging Systems Marketing Dept., Canon Lifecare Solutions Inc.

キーワード :

【目的】
直腸内触診法(DRE)は,経直腸的超音波法(TR-US)とともに重要な位置を占めている.しかし,DREは測定自体に定量性がなく,また判定結果が検査を行う医師の経験にも大きく左右されるなど,問題点も少なくなかった.そこで,私たちは,前立腺の内部組織の硬さを定量的に評価できる方法のひとつである,ShearWave Elastography (SWE)を活用することを試みた.SWEは,異なる深度に送信された収束超音波ビームにより組織を上下に振動させ,発生した円錐状のshear waveの伝播速度から組織弾性値を計算し,kPa単位で表示する.この測定結果からリアルタイムに2次元のelastographyマップが形成される.任意箇所の組織弾性もkPaで表示可能である.またSWEでは用手的にプローブを揺動して組織を圧迫する必要はなく,プローブを軽く測定部位に接触させるだけでリアルタイムに定量的なelastographyを行うことができるため,再現性に優れている.今回,前立腺に対してSWEを施行したので報告する.
【対象】
2012年8月より2012年9月までに,棚橋よしかつ+泌尿器科を受診した患者のうち,前立腺正常としてランダムに抽出され本研究の趣旨に賛同した27例,および前立腺癌患者61例を対象とした.
【方法】
通常のTR-USと同様に,SWE機能を具備したエンドキャビティ型プローブで検査を行った.SWEマップを取得し,関心領域の組織弾性を測定した.今回は,前立腺を右葉,左葉,TZ(移行域),PZ(辺縁域)の領域に分け,測定を行った.
【結果】
正常27例では,右PZ=29.9±9.3kPa,左PZ=34.1±10.3kPa,右TZ=48.7±18.4kPa,左TZ=40.3±18.8kPaだった.一方,前立腺癌61例では,右PZ=35.3±11.6kPa,左PZ=43.4±17.9 kPa,右T50.5±19.4kPa,左TZ=40.9±16.3kPaだった.TZでは,正常群と前立腺癌群との間に組織弾性率の差が認められなかったが,PZでは,右葉,左葉ともに,前立腺癌群で組織弾性率が高い結果を得た.
【考察】
SWEを用いた前立腺の内部組織弾性値の計測を試みた.今回のTZ,PZを分けた検討結果から,前立腺癌では正常例に比べPZでの弾性率が高いという結果を得た.私たちが検討したSWEによる前立腺の硬さ測定結果は,将来的に前立腺癌の早期発見に寄与する可能性を秘めているものと考えられた.