Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:横隔膜ヘルニア・他

(S595)

先天性左横隔膜ヘルニア胎児における肺胸郭断面積比と肺断面積児頭周囲長比の対応

Correlation between lung to thorax transverse area ratio and lung area to head circumference ratio in fetuses with left-sided diaphragmatic hernia

日高 庸博, 石井 桂介, 笹原 淳, 村田 将春, 林 周作, 岡本 陽子, 光田 信明

Nobuhiro HIDAKA, Keisuke ISHI, Jun SASAHARA, Masaharu MURATA, Shusaku HAYASHI, Yoko OKAMOTO, Nobuaki MITSUDA

大阪府立母子保健総合医療センター産科

Department of Maternal Fetal Medicine, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health

キーワード :

【目的】
先天性横隔膜ヘルニアの重症度を胎児期に評価することの意義は大きく,種々の超音波指標が提唱されている.その中で,肺断面積児頭周囲長比(LHR)の実測値を週数での予測値で補正したobserved/expected LHR (o/e LHR; %)は現在世界中で最も普及している指標である.一方,本邦から提唱された肺胸郭断面積比(LTR)も妊娠週数による影響を受けない安定した指標であることが知られているが,こちらは世界的な普及がなく,その報告はほぼ本邦からのものにとどまっている.用いる指標も新生児治療成績も異なる本邦と海外で,互いから報告される研究結果をどう理解すべきか,解釈に悩むことも多い.LTRとo/e LHRがどのような対応を示すかを検討することとした.
【対象,方法】
2005年1月から2012年10月までに当科で管理した左横隔膜ヘルニア胎児を対象とした.診療録より後方視的にLTRとLHRのデータを抽出し,o/e LHRを算出した.LTRは小数点以下第4位を,o/e LHRは小数点以下第3位を四捨五入してデータとした.Expected LHRはNicolaidesらのデータ(Ultrasound Obstet Gynecol 2005)を利用した.対象症例において妊娠32週までに計測,算出された全o/e LHR (%),LTRの値を元に,まず両者の相関関係をSpearmann相関係数を算出することで評価し,次に両者の関係を示す1次回帰式を求めた.またその回帰式の有意性と予測精度を評価した.統計解析にはSPSS ver.20を用いた.
【結果,考察】
対象期間に管理した左横隔膜ヘルニア症例は51例であったが,うち15例は妊娠33週以降の紹介例であった.これらを除いた36症例でのべ61回のLTR, LHR同日計測がなされていた.計測週数の中央値は30週(23 - 32週)であった.LTRとo/e LHRの間には正の相関関係が示され,その相関係数は0.74であった.LTRは当該週において,0.002×(o/e LHR)+0.005の1次式で表され,この回帰式は分散分析表よりp<0.01で有意であり,回帰係数もp<0.01で有意であった.決定係数は0.712であり,予測精度としても高いものであった.同式に代入すると,TOTAL (The Tracheal Occlusion to Accelerate Lung Growth) trialにおいて重症肺低形成に位置づけられているo/e LHR 25%はLTR 0.055に,Usuiらが2011年に報告したLTRの予後予測マーカーとしてのカットオフ値0.08はo/e LHR 37.5%に対応した.
【結論】
LTRとo/e LHRの間の強い関連性が示され,諸外国の研究報告を理解する上での一助になりうると考えた.ただし,expected LHRはU.K.での単一施設で集積されたデータを元に決定されており,本邦独自での検討が望まれる.