Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:その他

(S594)

胎児胸線の研究-正常発育パターンと母体ステロイド投与の影響

Ultrasonographic assessment of fetal thymus size with normal development and with cases after maternal exposure to corticosteroids

宮下 進1, 2, 室本 仁1, 2, 小澤 克典1, 2, 室月 淳1, 2

Susumu MIYASHITA1, 2, Jin MUROMOTO1, 2, Katsusuke OZAWA1, 2, Jun MUROTSUKI1, 2

1宮城県立こども病院産科, 2東北大学大学院先進成育医学講座胎児医学分野

1Department of Maternal and Fetal Medicine, Miyagi Childrens’ Hospital, 2Department of Advanced Fetal and Developmental Medicine, Tohoku University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
新生児の胸腺は出生後数日で著明に縮小することが知られている.胸腺サイズの縮小には,環境変化などのストレスに起因する内因性ステロイドによるアポトーシスが関与するとされ,また動物実験では外因性ステロイドによるアポトーシス誘導が証明されている.胎児期においても,妊娠高血圧腎症は小さい胎児胸腺と関連しているという報告があり,超音波断層法による胎児胸腺サイズの観察により子宮内でのストレス応答や,外因性ステロイドの効果を予測できる可能性が考えられる.
【目的】
以下の検証を目的とした.(1)正常胎児の胸線発育パターン,(2)母体ステロイド投与前後での切迫早産例,前期破水例における胎児胸線サイズの変化.
【方法】
(1)計測について同意の得られた妊娠16週から41週までの正常胎児180例を対象とした.胎児発育遅延,形態異常,染色体異常,妊娠高血圧症/妊娠高血圧腎症の発症は除外した.超音波断層法にて胎児心スクリーニングにおけるThree-vessel viewレベルで胎児胸腺断面を描出し,長径(最大径,cm),短径(最大径に直行する径,cm),トレースによる周囲長(cm)および面積(cm)を計測した.(2)母体ステロイド(ベタメサゾン)投与8例(25-32週,切迫早産6例,前期破水2例)で経時的に上記の計測を行った.
【成績】
(1)長径,短径,周囲長,面積は週数(GW)依存的に増大し,reference rangeの作成が可能であった.(図1) 長径=0.0003GW+0.0592GW 0.1482(R=0.8765),短径=0.0003GW+0.0302GW 0.1014(R=0.8441),周囲長=0.0011GW+0.1711GW 0.4439(R=0.8940),面積=0.0038GW 0.07GW+0.5411(R=0.9088) 
(2)母体ステロイド投与例では全例で胎児胸腺長径,短径,周囲長,面積ともに縮小した.(図2) 面積では投与前(第0日)を100%とした場合,第7日までに50-64%までの縮小を認めた.また,妊娠継続例では再増大が観察された.
【結論】
胎児胸腺は母体投与されたステロイドに応答して一過性に縮小する.胎児胸腺サイズの観察により,ストレス応答の定量化による母体ステロイド投与回避もしくは追加投与などの個別化治療や,適切な分娩時期の選択を行える可能性がある.