英文誌(2004-)
一般口演
産婦人科:症例
(S592)
超音波ドプラ法で動静脈シャント血流を評価した胎児硬膜静脈洞奇形の一例
Doppler sonographic evaluation of arteriovenous shunt flowin a fetus with dural sinus malformation
佐藤 由佳
Yuka SATOH
九州大学病院産婦人科
gynecology and obstetrics, Kyushu university hospital
キーワード :
硬膜静脈洞奇形(以下DSM)は,巨大な硬膜静脈洞に動静脈シャントを認め,脳腫瘍やくも膜嚢胞との鑑別が必要な稀な疾患である.症例は23歳の経産婦で,妊娠24週に胎児頭蓋内に嚢胞性病変を指摘された.妊娠26週の超音波検査で左後頭葉に径4cm大の低エコー領域を認めた.超音波ドプラ法では嚢胞性病変への動脈性の流入血管と静脈洞への流出血管を認め,流入血管の血流速度は75cm/sであった.以上の所見より,DSMと診断した.妊娠27週頃より腹水,皮下浮腫などが出現し,三尖弁逆流,胎児心胸郭比は67%と心拡大を認め,心嚢液の貯留も認めたことから動静脈シャントに伴う高拍出性心不全による胎児水腫と診断した.胎児MRI検査では,左後頭葉に径4cm大のT2W1で不均一な低信号を呈する腫瘤を認め,超音波診断と合致した.妊娠の進行に伴い胎児頭蓋内病変の拡大,胎児水腫の増悪を認め,母体は妊娠高血圧症候群を発症した.妊娠32週6日より分娩誘導を行い,児娩出に至ったが,死産となった.児は3705gの女児であった.胎児頭蓋内嚢胞性腫瘤の鑑別において,DSMの診断には超音波ドプラ法が有用であり,嚢胞内への血流速度が速い症例においては胎児水腫に移行し不良な経過をたどる可能性があると考えたため,文献的考察を含め報告する.