Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:症例

(S591)

胎児期にDandy-Walker malformationを疑われ出生後WalkerWarburg 症候群と診断した1例

A case of WalkerWarburg syndrome prenatally diagnosed with Dandy-Walker malformation

太崎 友紀子, 和田 誠司, 杉林 里佳, 花井 彩江, 住江 正大, 梅原 永能, 渡邉 典芳, 伊藤 裕司, 左合 治彦

Yukiko TAZAKI, Seiji WADA, Rika SUGIBAYASHI, Sae HANAI, Masahiro SUMIE, Nagayoshi UMEHARA, Noriyoshi WATANABE, Yushi ITO, Haruhiko SAGO

国立成育医療研究センター周産期センター

Center for Maternal -Fetal and Neonatal Medicine, National Center for Child Health and Development (NCCHD)

キーワード :

Walker Warburg症候群は滑脳症,小脳奇形,脳室拡大などの中枢神経形態異常,網膜形成異常,先天性筋ジストロフィーを示す症候群で,筋細胞膜におけるジストロフィン糖蛋白複合体の構成蛋白質であるα‐ジストログリカンの糖鎖修飾の異常による常染色体劣性遺伝性疾患である.我々は出生前の超音波断層法とMRIで胎児Dandy-Walker malformationが疑われ,出生後にWalkerWarburg 症候群と診断された症例を経験した.
症例は31歳,0経妊0経産,自然妊娠で妊娠が成立した.近医の産婦人科で妊婦健診を受けていたが妊娠24週に胎児水頭症を疑われたため,精査・加療の目的で妊娠24週5日に当科を紹介された.初診時の超音波断層法で側脳室,第3脳室,第4脳室の拡大と小脳虫部欠損を認め,Dandy-Walker malformationが疑われた.その他に明らかな形態異常はみられず,先天性感染症も否定的で,妊娠24週6日に施行された羊水染色体検査は正常核型であった.また,妊娠28週5日に胎児MRI検査を行い超音波断層法と同様の所見であった.以後,定期的に妊婦健診を行ったが妊娠経過に異常はみられず,胎児適応で妊娠37週6日に選択的帝王切開術を施行した.児は2516g,頭囲33cmの男児であった.Apgar scoreは6点(1分後)/8点(5分後)であったが,筋緊張は弱く,Moro反射・吸啜反射も減弱していた.出生時の超音波断層法で右側優位の側脳室拡大と小脳の低形成を認め,血液検査でCPKが14050U/lと異常高値で分画はCPK-MMが91%であった.肝酵素もAST 146U/l,ALT 60U/l,LDH 1037U/lと上昇していた.以上より,WalkerWarburg 症候群,福山型筋ジストロフィー,head-eye-muscle 症候群などの先天性筋ジストロフィーが疑われた.これらの疾患の鑑別は難しいが予後に大きな違いがあるため慎重な評価が要求される.日齢2の頭部MRI検査は脳室周囲の白質内に皮質と等信号を示す信号域が混在するcobblestone appearanceを呈し滑脳症Ⅱ型の所見であった.フクチン遺伝子の3´非翻訳領域への約3Kbのレトロトランスポゾンの挿入はなく,眼底検査は網膜白子症・視神経低形成であった.筋生検は施行されなかったが,滑脳症や小脳などの中枢神経所見,網膜形態異常などの臨床所見よりWalkerWarburg 症候群と診断した.児は呼吸・循環が安定し,経口哺乳が可能となったため,日齢37に退院となった.
初発例のWalkerWarburg 症候群を出生前に正確に診断することは難しいが,胎児に脳室拡大と小脳低形成がみられる症例はWalkerWarburg 症候群を鑑別疾患の1つとして念頭におく必要がある.