Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児心臓・血管Ⅱ

(S588)

単一臍帯動脈と関連する胎児異常のリスク

Single umbilical artery and its risks of associaterd fetal anormalies

磯部 美苗, 芳野 奈美, 大川 朋子, 吉田 英美, 内田 純子, 田坂 知子, 井上 アキ, 竹村 秀雄

Minae ISOBE, Nami YOSHINO, Tomoko OKAWA, Emi YOSHIDA, Jyunko UCHIDA, Tomoko TASAKA, Aki INOUE, Hideo TAKEMURA

小阪産病院医療技術部超音波室

Department of Ultrasound, Kosaka Womens Hospital

キーワード :

【目的・背景】
単一臍帯動脈は全出生の0.6〜1%に発生し20〜30%に胎児奇形(泌尿生殖器系や心奇形)を合併し約25%に子宮内胎児発育不全(FGR)を併発,染色体異常にも関連すると言われる臍帯の異常である.当院はローリスク分娩を主に取り扱いハイリスク例は母体や新生児搬送で高次医療施設に依頼しており年間約2000件の分娩を扱っている.そのため妊娠中の胎児スクリーニングを重視し日超医認定の超音波検査士6名が全妊産婦対象に妊娠中4回の胎児超音波スクリーニング検査を行っている.今回ローリスク妊婦における単一臍帯動脈の発生率とそれに合併する胎児異常のリスクを調査し検討した.
【対象・方法】
2007年1月から2011年12月までの5年間に当院で分娩または母体搬送後分娩,あるいは予後不良で中絶,死産した児を含む9870例中単一臍帯動脈と診断された44例を対象とし出生体重,分娩週数,性別,FGRの有無,Um.A-R.I.,単一臍帯動脈の検出時期,胎児異常の有無について検討した.
【結果】
全症例9870例中単一臍帯動脈は44例(0.45%)であった.全例出生前に超音波検査で単一臍帯動脈と診断され出生後に初めて発見された例は無かった.流産,死産,予後不良で中絶した例,紹介後の情報が不明などの6例を除くと出生体重は2500g未満3例,2500g〜3000g未満16例,3000g〜3500g未満15例,3500g〜4000g未満3例,4000g以上1例であった.分娩週数は早産2例,過期産1例でその他は正期産であった.性別は男21例,女21例,不明2例であった.単一臍帯動脈の検出時期は18週5例,19週10例,20週4例,28週5例と当院で行っている妊娠中期Ⅰ,中期Ⅱのスクリーニングで多くが検出された.Um.A-RIを計測した26例についてRI値は正常範囲内もしくは正常範囲より低値であった.ただし計測の時期は統一されておらず20週から41週まで様々であった.単一臍帯動脈症例で合併奇形を有する例は11例(25%)でその内容は泌尿生殖器系の異常1例(2.27%),消化器系2例(4.55%),心奇形3例(6.81%),染色体異常4例(9.09%),染色体異常を疑う多発奇形1例(2.27%)であった.
【考察】
単一臍帯動脈は全分娩の0.6〜1%に発生すると言われているが今回の検討での発生率は0.45%とやや低率であった.これは当院が低リスクの分娩を主に扱う一次施設であるためと思われる.早産児を除く低出生体重児は1例であり臍帯卵膜付着を伴っていた.一般的に早産は全分娩の5%,過期産は1〜3%に起こると言われているが今回の検討での早産・過期産例は通常の頻度内であり単一臍帯動脈により有意に増えていない.性別は男女同数で有意差は無く,18週〜20週で多くの例が検出可能と思われる.合併奇形の発生頻度や内容は当院においても一般に言われている説がほぼ当てはまることがわかった.低出生体重児は今回の検討では1例のみであった.この例は妊娠経過中はFGR傾向を示しておらずUm.A-RI の計測も行っていなかった.Um.A-RI が計測できた26例では11例が低値,15例が正常範囲であった.単一臍帯動脈でFGR傾向を示さない群は1本の臍帯動脈で血流を補完するために血管の抵抗が低く血流が良くなっていると推測される.当院のようにローリスク妊娠を主に取り扱う施設では単一臍帯動脈の症例が少ないため関連する胎児異常の数も少ないが合併奇形率25%は一般の奇形有病率3〜5%に比し約4倍高率であることがわかった.