Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:妊娠・分娩

(S587)

分娩時の肛門括約筋裂傷の評価における経会陰超音波検査の工夫

Improvement in diagnosis by transperineal ultrasound in postpartum evaluation of the anal sphincter defects

後藤 美希

Miki GOTO

社会保険中央総合病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Social Insurance Chuo General Hospital

キーワード :

【目的】
近年,分娩時の肛門括約筋裂傷の評価を経会陰超音波検査で診断しようという報告が国内外でされるようになってきた.その結果,損傷が比較的高頻度であること,また,損傷の多くは肛門管の11時〜2時方向に認めることがわかってきたが,一方で,同部位はプローブとの間に近距離多重反射が起こりやすく,経膣用高周波プローブを用いても評価が困難であることがしばしばある.そこで,反射を軽減する目的で会陰部にゲル剤を当てて経会陰超音波検査を施行,評価の改善につながるか検討した.
【対象と方法】
経膣分娩後4日目に経会陰超音波検査を行い,ゲル剤を使用しない場合に肛門括約筋裂傷の評価が困難であった20例を対象とした.超音波装置はGE Healthcare社製voluson i,5-9MHzの経膣3D/4Dプローブ,ゲル剤は日本ビーエックスアイ社のSonar-Aidゲルフィルム厚さ10mmを使用した.ゲル剤を3×4cm大にカットし,会陰部に当てた上にプローブを当てて経会陰超音波検査を行い,肛門括約筋の観察を行った.ゲル剤は,数量に限りがあったため,超音波ゼリーを塗ってプローブカバーで包埋し,再利用した.肛門括約筋損傷の診断は,会陰からのアプローチで得られた3D超音波画像をTUI (tomographic ultrasound imaging)を用いて肛門管に垂直方向に幅1mmのスライス画像を作成して行った.まずゲル剤なしで観察し,評価困難と思われた症例に対しては,ゲル剤を用いての観察を行った.
【結果】
ゲル剤を使用した場合,ゲル剤なしで観察した場合と比較して15例で評価の改善が見られた.一方で,同レベル,又は評価が更に困難になった例が5例あり,いずれも多重反射がより強く生じたことで評価が困難となった.
【考察】
肛門括約筋の評価を経会陰超音波検査で行う際,ゲル剤を使用することが評価の改善につながる可能性が示唆された.一方で評価の改善を認めなかった症例もあり,その理由は,プローブと肛門括約筋との間に空気の層が混入したことで超音波による乱反射がおきたと考えられた.ゲル剤とプローブカバーの間に入れる超音波ゼリーの量や入れ方,ゲル剤の会陰部の当て方等,今後更なる検討をすることで評価の改善が期待できると思われる.