Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:MRI

(S585)

胎児超音波と胎児MRIの対比/腹壁異常の3例

Comparison of Fetal US and MRI , Case of abdominal wall anomaly

稲川 天志1, 渋谷 一敬1, 高村 公裕3, 山下 恵永3, 松原 馨1, 川瀧 元良2

Takashi INAGAWA1, Kazunori SHIBUYA1, Kimihiro TAKAMURA3, Yoshihisa YAMASHITA3, Kaoru MATSUBARA1, Motoyoshi KAWATAKI2

1東京慈恵会医科大学附属第三病院放射線部, 2地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター新生児科, 3東京慈恵会医科大学附属病院放射線部

1Department of Radiology, Jikei University School of Medicine daisan hospital, 2Neonatology, Kanagawa Children’s medical Center, 3Department of Radiology, Jikei University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
超音波の画質の向上に伴い,胎児診断率も年々向上している.また,MRIも高速撮像法が一般化,最大の問題点であった動きの影響が抑制され,画質の向上が図られている.以前から胎児MRIで適応頻度の高い体幹部の疾患の中でも,腹壁異常(代表例として臍帯ヘルニア,腹壁破裂)における超音波画像とMRI画像を比較し,胎児診断をより正確かつ詳細に行うべく検討を試みた.尚,比較方法は,TUI(Tomographic ultrasound imaging)をMRIの撮像断面と同様に再構成し,両者を比較した(図1).
【症例】
超音波検査で腹壁異常と診断された症例のうち,MRIを施行した3例.MRIで知り得た代表的な臨床情報を以下に記す.症例1(33w).ヘルニア嚢を認める.嚢内では肝臓の一部は体外へ突出し,腸管は広範に腹側・尾側の体外へ脱出,胃も尾側部分ではやや腹側に偏位している.臍帯ヘルニアを考える.症例2(32w).ヘルニア嚢を認める.嚢内では肝左葉外側区の一部が脱出気味,他に胃の脱出が認められる.臍帯ヘルニアを考える.症例3(33w).横隔膜付着直下から臍帯部にかけて,上下3cm弱におよぶ腹壁欠損部があり,同部から腹腔内臓器のほぼすべて脱出している.肝臓は全て脱出し,脾も腹腔内に同定できない.小腸は脱出して著明に拡張している.腹壁破裂を考える.
【考察】
腹壁異常における出生前診断において,超音波検査に加えMRIを施行することで,詳細な評価も可能であった.特に動きの影響を受けず,水を高信号に描出するHASTEやTrueFISPといった撮像方法で,ヘルニア嚢の有無や連続性を描出し,臍帯ヘルニアと腹壁破裂の鑑別に有用であった.さらに全体像の把握により,脱出臓器の同定や程度,肺の容積を計測し,手術への適応や術式の決定などに役立っていた.超音波検査ではカラードプラでの臍帯付着部の確認や,蠕動の確認による消化管の同定などが,MRIにはない必要不可欠な情報であると言える.また,臍帯ヘルニアにおいてはその他臓器の合併異常率が高いという報告があり,特に心臓奇形が多いと言われている.現在のMRIの空間分解能や時間分解能では胎児心臓超音波ほどの情報は乏しく,心臓奇形の診断に関しては超音波の方が有用と考える.