渋谷 一敬¹, 高村 公裕², 山下 恵永², 稲川 天志¹, 松原 馨¹, 川瀧 元良³

Kazunori SHIBUYA¹, Kimihiro TAKAMURA², Yoshihisa YAMASHITA², Takashi INAGAWA¹, Kaoru MATSUBARA¹, Motoyoshi KAWATAKI³

¹東京慈恵会医科大学附属第三病院放射線部, ²東京慈恵会医科大学附属病院放射線部, ³神奈川県立こども医療センター新生児科

¹Department of Radiology, Jikei University school of medicine daisan hospital, ²Department of Radiology, Jikei University school of medicine, ³Neonatology, Kanagawa Children’s medical Center

キーワード :

【はじめに】
超音波の画質の向上に伴い，胎児診断率も年々向上している．また，MRIも高速撮像法が一般化され，最大の問題点であった動きの影響が抑制され，画質の向上が図られている．近年の胎児MRIの代表的疾患である先天性嚢胞状腺腫様奇形（congenital cystic adenomatoid malformation;以下CCAM）における超音波画像とMRI画像を比較し，CCAMにおける胎児診断をより正確かつ詳細に行うべく検討を試みた．尚，比較方法は，TUI（Tomographic ultrasound imaging）をMRIの撮像断面と同様に再構成し，両者を比較した（図1）．
【症例】
超音波検査でCCAM疑いと診断された症例のうち，MRIを施行した3例．MRIで知り得た代表的な臨床情報を以下に記す．症例1（33w2d）．左胸郭は多発する大小の嚢胞性病変により占められている．縦隔は右へと圧排されている．左肺のCCAM（macrocystictype）を第一に考える．症例2（34w2d）．HASTE像で，右肺下葉は全体に高信号を呈しており，容量も増加している．右肺下葉のCCAM （microcystic）を第一に考える．症例3（28w0d）．左肺は全体的に高信号を呈しており，容量も増加している．HASTE像での信号は不均一で，強い信号を呈する部分と，やや信号が低い部分が混在して認められる．CCAM（macro&microcystictype混在型）が考えられる．頭側〜腹側部分は信号が異なる部分があり，正常肺の可能性がある．
【考察】
CCAMの症例に対し，超音波検査に加えMRIを施行することで，病変の拡がりや病気分類の判別が容易となった．特に，動きの影響を受けず，水を高信号に描出するHASTE（HeavyT2）画像が有効的であった．また，超音波検査におけるmicrocystictypeの同定はmacrocystictypeに比べ困難であるが，MRIを用いる事により明確に同定することができた．また，肺分画症などとの鑑別が重要であるため，超音波検査による血流情報は，MRIにはない必要不可欠な情報であると言える．