Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:異常妊娠・胎児発育不全

(S583)

分娩前精密超音波外来の有用性についての検討

The analysis of availability of screening ultrasound at 36 weeks’ gestation for predicting non-fetal reassuring status during labor

大瀬 寛子

Hiroko OHSE

昭和大学産婦人科学教室

Obstetrics and Gynecology, Showa University School of Medecine

キーワード :

【目的】
分娩中の急速な胎児機能不全の原因に胎児付属物異常の占める割合は多い.近年,多くの付属物異常は超音波で診断することが可能となっているが,それらの異常に対しての分娩管理方針は一定ではない.その統一と安全な分娩管理方法の確立を目指して,当院では2012年より妊娠36週にチェックリストを用いた分娩前精密超音波外来を施行し,胎児および付属物の異常の有無の最終確認を行い,一定の方針のもと分娩管理方法を決定する方式を試行して来た.本研究の目的は,その有用性や問題点を明らかにすることである.
【方法】
2012年以降,妊娠36週に分娩前精密超音波外来を受診し,当院で分娩に至った症例を対象に,チェックリストに記載された外来での診断,方針決定とその例の分娩経過との関係を後方視的に検討した.チェック項目は,胎位・胎向,児推定体重,羊水量,胎盤付着部位,臍帯付着部位,臍帯の捻転の程度(coiling index),臍帯巻絡,臍帯下垂の有無,臍帯動脈ドプラ,母体既往歴,子宮異常,手術既往,児頭骨盤不均衡の可能性である.なお,当院では妊娠中期にも胎児形態異常の確認を中心とした中期精密超音波外来を行っており,胎児形態異常の有無は既知としている.また,臍帯付着部位などが描出困難な場合は,中期に診断された結果を参照しチェックリストに記載している.異常ごとに分娩のリスク評価を行い,その程度によって,分娩時の胎児心拍数図(CTG)の取得などを含めた分娩管理方法を以下のように決定した.①通常管理(適宜CTGを使用する),②フルモニタリング(陣痛発来,破水後持続的にCTGを使用する),③ダブルセットアップ(事前に帝王切開術前検査と手術同意書の取得の上,フルモニタリングとする),④分娩誘発(ダブルセットアップの上,頸管熟化・分娩誘発を行う),⑤予定帝王切開である.異常に対する分娩方針の決定は,我々の作成した基準に従って行った.CTGの判読は,日本産婦人科学会のガイドラインに準じて行い,胎児機能不全の診断はレベル3以上,急速遂娩の決定はlevel 4以上で行われた.なお,本研究は当院の倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
対象504例を検討した.通常管理389例,フルモニタリング25例,ダブルセットアップ22例,分娩誘発2例,予定帝王切開66例に分別された.通常管理で胎児機能不全,そのための緊急帝王切開の頻度は6.7% (26/389),0.3% (1/389)であったのに対し,フルモニタリングではそれぞれ,8.0% (2/25; p=0.04),4.0% (1/25; p=1.00),ダブルセットアップ,13.6% (3/22; p=0.06),9.2% (2/22; p=0.16),分娩誘発,50.0% (1/2; p=1.00),0% (0/2; p=1.00)であった.超緊急帝切(Grade A)の頻度は,通常管理で0.77%(適応:胎児機能不全2例,早剥1例),フルモニタリング,0%,ダブルセットアップ,4.5%(適応:胎児機能不全1例),分娩誘発,0%であった.
【結論】
胎児付属物異常などが理由で,ハイリスク分娩と判断した症例では,胎児機能不全,緊急帝王切開の頻度が高いことが明らかとなった.妊娠中の系統立てた付属物異常の診断に基づいて,分娩管理方法を決定することは,リスクを回避するための準備体制を整える上で意義があることが示された.