Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:腫瘍・羊水

(S579)

急速に胎児水腫への進行を認めた胎児副腎腫瘍の1例

A case of fetal adrenal tumor which had progressed acute hydrops

山村 倫啓1, 住江 正大1, 三輪 照未2, 太崎 友紀子1, 小川 浩平2, 杉林 里佳1, 梅原 永能2, 和田 誠司1, 渡邉 典芳2, 左合 治彦1

Michihiro YAMAMURA1, Masahiro SUMIE1, Terumi MIWA2, Yukiko TAZAKI1, Kouhei OGAWA2, Rika SUGIBAYASHI1, Nagayoshi UMEHARA2, Seiji WADA1, Noriyoshi WATANABE2, Haruhiko SAGOU1

1国立成育医療研究センター周産期センター胎児診療科, 2国立成育医療研究センター周産期センター産科

1perinatal care center, National Center for Child Health and Development, 2obstetrics, National Center for Child Health and Development

キーワード :

【緒言】
胎児副腎腫瘍は妊娠後期に超音波検査にて診断されることが多く,超音波検査にて腎疾患(水腎症,多発性嚢胞腎,中胚葉性腎腫瘍),他の副腎疾患(副腎出血など)との鑑別を要する.今回,我々は出生前に急速に胎児水腫への進行を認めた胎児副腎腫瘍の1例を経験したので報告する.
【症例】
33歳,初産婦.妊娠30週の健診までは特に異常所見を指摘されなかった.妊娠32週6日の超音波検査時に胎児腹部腫瘤を疑われ,精査目的で紹介受診となった.胎児超音波検査では右側腎上極が圧排され,32×30×36mmの辺縁が整で軽度高輝度の内部に血流を伴わない充実性腫瘤を認め,胎児副腎腫瘍を疑った.その他の形態異常は認めなかった.妊娠33週6日にMRIを施行し,副腎に腫瘤性病変を認め,T2W1では不均一な高信号,T1W1では不均一な低信号を呈しており,神経芽細胞腫が疑われた.妊娠34週0日に羊水染色体検査を施行し,正常核型であった.同時に測定した羊水中VMAは0.2mg/l,HVAは0.2mg/l.妊娠35週2日の超音波断層検査にて副腎腫瘍の増大傾向は認めなかったが,胎児水腫への急速な進行を認め(皮下浮腫,胸水,腹水,CTAR 46%)た.母体の全身性の浮腫を認め,Mirror症候群を疑い,同日緊急帝王切開を施行した.児は女児で,体重3268g,全身の浮腫は著明であった.出生直後から啼泣,体動を認め,Apgar scoreは1分値8点,5分値8点であった.出生時に陥没呼吸を認めたためmask CPAPとし,精査管理目的でNICUに入室となった.出生後の胎盤病理にて絨毛血管内に類円形核を有する腫瘍細胞の集蔟がみられ,また細胞間に神経細線維を認めたため,右副腎の神経芽細胞腫からの胎盤転移と考えられた.他臓器への転移を伴わず(stageⅠ),腫瘍の増大傾向も認めず,N-myc遺伝子の増幅を認めなかった.新生児期の神経芽細胞腫は自然退縮が期待できるため,外科的切除は行わず心不全の再燃に注意しながら経過観察をおこない,生後3ヶ月現在経過は良好である.
【考察】
胎児に副腎腫瘍(神経芽細胞腫)を認める場合は,児が急速に胎児水腫に進行し,母体のMirror症候群となる場合があり,慎重な経過観察が必要である.神経芽細胞腫で胎児水腫を認める場合は,腫瘍の胎盤転移を疑うが,他臓器への転移がない場合の予後は良好である.