Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児心臓・血管Ⅰ

(S577)

前置血管

Vasa previa

三好 剛一, 根木 玲子, 桂木 真司, 吉松 淳

Takekazu MIYOSHI, Reiko NEKI, Shinji KATSURAGI, Jun YOSHIMATSU

国立循環器病研究センター周産期・婦人科

Department of Perinatology and Gynecology, National Cerebral and Cardiovascular Center

キーワード :

【はじめに】
胎児血管が胎盤や臍帯に支持されず子宮頸管上部で胎児先進部以下の胎児膜を横切って走行するものを前置血管という.前置血管には,臍帯の卵膜付着があるタイプと二葉胎盤または副胎盤の間の卵膜の表面に血管走行があるタイプの2つがある.破水時に血管破綻した場合の周産期死亡率は70〜90%にものぼる.児の救命には破水前の選択的帝王切開術が必要であり,そのためには胎内で診断されているということが極めて重要となる.当院で経験した前置血管症例を提示しながら,診断および管理の注意点について述べたい.
【症例】
33歳,初産婦,自然妊娠後,近医で妊婦健診.妊娠20週の胎児エコースクリーニングで心疾患を疑われ,当科へ紹介となった.胎児心エコーで心房内臓位は正常,右室型の単心室,両大血管右室起始症,房室弁閉鎖不全(軽度)と診断した.児の予後,将来的にFontan循環を目指すことなどを説明した上で,妊娠継続を選択され外来通院とした.初診時には,胎盤は後壁付着で辺縁が内子宮口にかかる位置であり,臍帯は内子宮口側寄りで胎盤に付着していたが辺縁付着ではなかった.妊娠30週の健診では,胎盤辺縁は内子宮口から1.5〜2.0cm程度の位置までmigrationしていた.妊娠32週の健診時にも胎盤はほぼ同様の位置であったが,経腟エコー時にカラードップラーを使用したところ,内子宮口を前後に縦断する血管が描出された.パルスドップラーで臍帯動脈と同一の血流波形が確認され,前置血管と診断した.経腹エコーでみると,子宮前壁低位に副胎盤があり,後壁に付着した胎盤との間の卵膜上に計4本の血管の走行が確認された.いずれもB-modeでは確認が困難であった.翌日より入院管理とした.バセドウ病合併妊娠であったため,子宮収縮抑制剤として硫酸マグネシウム点滴を持続し,妊娠37週での選択的帝王切開術とした.
【考察・結論】
前置血管では血管径が細く,本症例でもB-modeでの診断は困難であった.経腟エコーでカラードップラーを使用し,パルスドップラーで臍帯血流波形が確認できれば診断は難しくないため,ハイリスク症例では積極的にD-modeを使用すべきと考えられた.また,臍帯付着異常と胎児異常との関連も報告されており,当院での胎児心疾患との関連についても検討したい.