Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児心臓・血管Ⅰ

(S576)

異なる転機を示した心奇形を合併しない胎児右側大動脈の2例

Two Cases of right aortic artery without other congenital heart disease

田中 利隆, 市山 卓彦, 佐藤 杏奈, 植木 典和, 平山 貴士, 山口 貴史, 田中 沙織, 菅沼 牧知子, 田口 雄史, 三橋 直樹

Toshitaka TANAKA, Takuhiko ICHIYAMA, Aana SATOH, Norikazu UEKI, Takashi HIRAYAMA, Takashi YAMAGUCHI, Saori TANAKA, Machiko SUGANUMA, Takeshi TAGUCHI, Naoki MITSUHASHI

順天堂大学医学部附属静岡病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Juntendo University Shizuoka Hospital

キーワード :

【はじめに】
大動脈弓部は発生過程で対称性の二本の動脈弓が輪を作っており,正常では右側が消退して左側大動脈弓のみが残る.この過程で左側が消退したものが右側大動脈弓となり,頻度は約0.1%で他の心奇形や血管輪を合併することが多い.今回我々は心内構造異常を伴わない2例の右側大動脈弓を出生前診断し,生後異なる経過を呈したため報告する.
【症例1】
33歳2経妊2経産,妊娠30週の胎児心臓スクリーニングで,4-chamber view(4CV)断面において下行大動脈が右側にあり精査施行,心内構造異常は伴わなかったが,3 vessel view(3VV),3 vessel trachea view(3VTV)で蛇行する動脈管と右側大動脈弓を認めた.大動脈径7mm,動脈管径4mmで気管は動脈管の左側にあり血管輪の所見は認めなかった.40週0日に正常経腟分娩で3122g,Ap9/10の女児を分娩となった.出生後の超音波,3D-CT検査では血管輪の形成や,気道や食道の圧迫所見を認めず,出生後経過は問題なかった.
【症例2】
25歳1経妊1経産,妊娠34週の胎児心臓スクリーニングで,4-chamber view(4CV)断面において下行大動脈が右側にあり精査を施行,心内構造異常は伴わなかったが,右側大動脈弓と大動脈径5mm,動脈管径8mmと両血管径の差を認めた.3VV,3VTVで気管は動脈管の左側にあり血管輪の所見は認めなかった.骨盤位であったため37週5日に帝王切開にて2566g,Ap8/8の男児を分娩した.生後重症TTNのため人工呼吸器管理となった.日齢8に呼吸状態の改善を認め抜管となったが,動脈管開存による心不全徴候を認めたためPDA banding目的に他院転院搬送となった.搬送後,動脈管は自然経過で閉鎖傾向にあったため,手術は施行せず,動脈管の閉鎖に従い心不全は改善した.
【考察】
4CV,3VV,3VTVが右側大動脈弓や血管輪の出生前診断には有効と思われた.心奇形のない右大動脈弓は予後良好とされるが,胎児期の動脈管径によって予後が異なる可能性があり,出生後も注意深い経過観察が必要である.