Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝癌以外の造影Ⅱ

(S574)

肝類上皮型肉芽腫の造影超音波所見

Epithelioid granuloma of the liver: comparison with histopathology and contrast ultrasound findings

栗原 浩子1, 坂本 裕衣1, 岡野 宏美1, 谷 祥子1, 関口 隆三2, 行澤 斉悟3, 尾澤 巌4, 五十嵐 誠治5

Hiroko KURIHARA1, Yui SAKAMOTO1, Hiromi OKANO1, Yoshiko TANI1, Ryuzo SEKIGUCHI2, Seigo YUKISAWA3, Iwao OZAWA4, Seiji IGARASHI5

1栃木県立がんセンター臨床検査部臨床検査科, 2栃木県立がんセンター画像診断部, 3栃木県立がんセンター腫瘍内科, 4栃木県立がんセンター肝胆膵外科, 5栃木県立がんセンター臨床検査部病理診断科

1Division of Clinical Laboratory, Tochigi Cancer Center, 2Division of Diagnostic Imaging, Tochigi Cancer Center, 3Division of Medical Oncology, Tochigi Cancer Center, 4Division of Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery, Tochigi Cancer Center, 5Division of Diagnostic Pathology, Tochigi Cancer Center

キーワード :

【はじめに】
肝の肉芽腫性病変は稀ではなく,その背景としてPBC,サルコイドーシス,薬剤性肝障害,C型肝炎などが知られている.多彩な画像所見を呈することから,癌との鑑別に苦慮する症例も多い.今回我々は,特徴的と思われる造影超音波所見を呈した肝類上皮性肉芽腫を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
【症例】
73歳女性.前医にて肝左葉腫瘤を指摘するも確診に至らず経過観察.3ヶ月後の超音波検査にて腫瘤の増大が認められ,各種検査を施行.肝内胆管癌が疑われ,当センター紹介となる.
【検査所見】
来院時腹部超音波検査B-modeでは,肝左葉外側区域に45×33×29mmの境界不明瞭な淡い高エコー域が認められた.高エコー域の内部を左肝静脈が貫通し,既存血管の圧排や浸潤所見は認められず,腫瘤性病変としての所見には乏しく,カラードプラでは腫瘤内を貫通する既存血管以外の血流信号は認められなかった.質的診断目的にソナゾイド造影超音波検査を施行した.ソナゾイドは推奨投与量の半量(0.41ml)を前腕に留置した22G留置針より生理食塩水10mlで,1ml/秒にてフラッシュ注入した.用いた超音波装置はAplio XG(東芝),pulse subtraction modeを用い,MI値0.20-0.25の低音圧にて観察した.ソナゾイド静注後15秒で高エコー域全体が一様に濃染し,30秒で周囲肝組織とほぼ同等の染影となった.40秒より高エコー域のmicro bubbleはややwash outされたが,染影の持続が認められ,同部を流れるmicro bubbleが観察された.以上の所見より,肝内胆管癌や転移性肝腫瘍などの悪性腫瘍よりもむしろ炎症性病変などの良性疾患を疑った.患者は高血圧および糖尿病の既往があり,血液・生化学検査では,HbA1が高値以外,異常所見は認められなかった.他の画像検査,造影CTおよびMRIでは,肝内胆管癌が疑われた.最終画像診断には至らず,肝内胆管癌の可能性が否定できないことから,肝左葉切除術が施行された.病理組織学的検索では,結節部に一致して多数の類上皮型肉芽腫を認めており,門脈域を中心に形成された類上皮型肉芽腫が相互に近接癒合して肉眼的な結節を形成していた.CD31抗体染色では,肉芽腫の辺縁部を中心に血管の増生する所見を認め,HEおよびHepPar-1染色では,肉芽腫間に変性した肝細胞が疎に残存していた.
【考察】
造影超音波検査では,早期に全体が濃染後,周囲肝組織と同様の染影を示した後に,ごくわずかなwash out像を呈するという肝内胆管癌や転移性肝腫瘍とは異なる特徴的な染影パターンを示し,これが,類上皮型肉芽腫の結節辺縁部において比較的密に存在する肉芽腫と結節内部に疎に存在するKupffer 細胞やhistiocyteを表していると推測される.リアルタイムに詳細な血流情報や血管構築を提供し,Kupffer細胞やhistiocyteの存在診断を推定できる造影超音波検査は,炎症性疾患を含めた肝腫瘍性疾患の質的診断に大きく貢献するものと期待される.