Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:びまん性肝疾患Ⅱ

(S570)

フィブロスキャンを用いた常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)症例における肝硬度の検討

Liver Stiffness Measurement of Autosomal dominant Polycystic Kidney Disease using Fibroscan

伝法 秀幸1, 斎藤 聡2, 窪田 幸一1, 宇賀神 陽子1, 乳原 善文3, 竹内 和男4

Hideyuki DENPO1, Satoshi SAITOH2, Kouichi KUBOTA1, Yoko UGAJIN1, Yoshifumi UBARA3, Kazuo TAKEUCHI4

1虎の門病院分院臨床検査部, 2虎の門病院肝臓センター, 3虎の門病院腎センター, 4虎の門病院消化器内科

1Department of Clinical Laboratory, Toranomon Hospital kajigaya, 2Department of Hepatology, Toranomon Hospital, 3Department of Nephrology, Toranomon Hospital, 4Department of Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【目的】
常染色体優性多発性嚢胞腎(以下ADPKD)は,両側腎や肝などに多数の嚢胞が進行性に発生・増大し,種々の臓器に障害が生じる遺伝性疾患である.今回我々はフィブロスキャンを用いてADPKD症例における肝硬度(LSM)を測定し検討した.
【対象】
腹部超音波検査,フィブロスキャン,CTを施行したADPKD患者74例.年齢35〜82歳(中央値58歳),男女比28:46,BMI14.6〜 29.0(中央値21.8),肝表までの皮下厚は,10mm以下:20例/11〜15mm:36例/16mm以上:18例,人工透析導入中50例.肝TAE施行8例,腎TAE施行19例.皮下厚25mm以上の症例,ウイルス性などの慢性肝疾患合併症例は除外した.
【方法】
使用機器はECHOSENS製 Fibroscan502(Mプローブ),東芝製 Aplio XG・XV,GE製LOGIQ E9.右肋間走査よりBモード走査にて肝嚢胞が入らない測定位置を探し,Fibroscan502にて10回測定した中央値を肝硬度(LSM)として肝腫大・腎腫大の有無と程度,脾腫の有無など各種検討を行った.
【結果】
①ADPKD症例のLSM:74例中,測定可能であった59例(79%)の中央値7.0kPa(min2.8〜Max73.5),測定不能例は15例(21%)であった.②優位腫大臓器別肝硬度(中央値:最少値:最大値)は,肝優位腫大(肝>腎):13.6kPa(4.1〜73.5kPa),腎優位腫大(肝<腎):6.0kPa (2.8〜38.1kPa)であり,肝優位腫大を認める例の方が有意に高値となった.③肝腫大程度別LSM(中央値:最少値:最大値)は,腫大なし4.7kPa(2.8〜38.1kPa),腫大あり7.9kPa (3.3〜 73.5kPa)となり,肝腫大を認める例は有意に高値であった.肝腫大程度別では軽度:5.6kPa(2.8〜38.1kPa),中等度:13.5kPa(5.0〜 32.0kPa),高度:13.7 kPa(4.8〜73.5kPa),であった.肝の腫大が進行するとともにLSMは高値を示す傾向であり,軽度と中等度・高度では有意差を認めた.④腎腫大程度別LSM(中央値:最少値:最大値)は,腫大なし4.7kPa(4.0〜13.4kPa),腫大あり7.1kPa (2.8〜73.5kPa)となり,腎腫大を認める例は高値傾向を示すものの有意差は認めなかった.腎腫大程度別では,軽度:6.7kPa(2.8〜 16.9kPa),中等度:7.8kPa(3.0〜66.4kPa),高度:7.1(4.0〜73.5kPa),であった.腎腫大の軽度〜高度まで肝硬度に有意差は認めなかった.⑤脾腫の有無では,脾種なし4.7kPa(2.8〜16.9kPa),脾腫あり8.2kPa (4.4〜73.5kPa)となり,脾腫を認める例の方が有意に高値となった.⑥人工透析の有無によるLSMの差はなかった.
【まとめ】
ADPKD症例では肝硬度の上昇を認めた.これは肝腫大優位な例ほど高値となり,また腫大が高度になるに従いより高値となった.腎腫大は有意な肝硬度への影響はなかった.