Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:びまん性肝疾患Ⅱ

(S570)

C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療による肝硬度の変化についての検討

Change of the liver stiffness with the interferon therapy for chronic hepatitis C

刑部 恵介1, 3, 市野 直浩1, 3, 西川 徹2, 3, 加藤 美穂2, 杉山 博子2, 青山 和佳奈2, 鈴木 亜委2, 川部 直人3, 橋本 千樹3, 吉岡 健太郎3

Keisuke OSAKABE1, 3, Naohiro ICHINO1, 3, Toru NISHIKAWA2, 3, Miho KATO2, Hiroko SUGIYAMA2, Wakana AOYAMA2, Ai SUZUKI2, Naoto KAWABE3, Senjyu HASHIMOTO3, Kentarou YOSHIOKA3

1藤田保健衛生大学医療科学部臨床検査学科, 2藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 3藤田保健衛生大学医学部肝胆膵内科

1Faculty of medical Technology, School of Health Sciences, Fujita Health University, 2Department of Clinical Laboratory, Fujita Health University Hospital, 3Department of Liver, Biliary Tract and Pancreas Diseases, School of Medicine, Fujita Health University

キーワード :

【目的】
C型慢性肝炎の治療は,HCVの除去を目的としたインターフェロン(IFN)治療を中心として行われており,その効果判定もウイルス量を指標として行われている.しかし,IFN治療の最終的な目標は肝硬変や肝癌への進展を防ぐことであり,肝線維化stageの改善を評価することが必要である.近年,開発されたVirtual Tissue Touch Quantification(以下VTTQ)を用いた肝硬度の測定は,超音波により直接肝臓の硬さを評価する手法であり,肝線維化stageの評価に有用な手法として多くの報告がなされている.そこで,C型慢性肝炎に対するIFN治療による肝硬度の変化について検討を行った.
【対象】
藤田保健衛生大学病院にて2009年9月〜2012年11月までにIFN治療を行ったC型慢性肝炎患者のうち,肝硬度測定が施行しえた75例(男性35例,女性40例,平均年齢57.1±12.0歳,ジェノタイプ1型/2型:52例/23例)を対象とした.
【方法】
超音波診断装置は,持田シーメンスメディカルシステム社製S2000 を用いた.VTTQによる測定は,右肋間走査にてランダムに計10回計測し中央値を測定値(Vs;m/sec)として用いた.なお,Vs測定はインターフェロン治療前,治療直後,治療後1年の3点で行った.また,IFNの治療効果より著効(SVR)群,無効(NR)群,再燃(Relapser)群に分け検討を行った.
【結果】
①治療前におけるVs値の比較:治療前におけるVs値の比較では,SVR群(36例)は1.24(1.02〜1.43),NR群(22例)は1.63(1.21〜1.96),Relpser群(17例)は1.36(1.20〜1.63)であり,SVR群はNR群に比べ有意に低値を示した(P=0.0101).さらに,ジェノタイプ1型について比較するとSVR群(17例)は1.25(0.98〜1.41),NR群(21例)は1.65(1.21〜1.96),Relpser群(14例)は1.37(1.17〜1.62)であり,SVR群はNR群に比べ低値を示した(P=0.0813).
②IFN治療経過におけるVs値の比較:SVR群では治療前1.24(1.02〜1.43),治療直後1.16(1.07〜1.34),治療後1年1.06(0.94〜1.12)であり,それぞれの間に有意差が認められた(P<0.05).一方,NR群はそれぞれ1.63(1.21〜1.96),1.54(1.25〜1.89),1.64(1.16〜1.81),Relapser群は1.36(1.20〜1.63),1.28(1.15〜1.55),1.20(1.09〜1.80)であり,両群のいずれの間においても明らかな有意差は認められなかった.
【考察】
治療前のVs値はSVR群ではNR群に比べて有意に低かった.さらに,IFN治療によるVs値の変化については,SVR群では治療終了時に有意に低下し,1年後にさらに有意に低下しており,肝線維化が改善していることが示唆された.一方,Relapser群では治療終了時にVs値の有意な改善が認められなかった.SVR群とRelapser群は治療終了時点でウイルスが消失している点では同様であるが肝線維化の改善において差があることを示唆する所見であり,今後症例数を増やしてさらなる検討が必要であると思われた.以上より,C型慢性肝炎に対するIFN治療による肝硬度の変化を評価することは,治療効果の予測や効果判定(肝線維化進展度の改善)などについて有用な情報を提供できるものと推測された.