Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:びまん性肝疾患Ⅱ

(S569)

ソナゾイド造影time-intensity curveを用いた急性肝炎肝実質灌流の経時的検討

A clinical study of liver parenchymal TIC obtained by Sonazoid CEUS in patients with acute hepatitis

松清 靖1, 一森 美生江1, 和久井 紀貴1, 篠原 正夫1, 池原 孝1, 小林 康次郎1, 丸山 憲一2, 工藤 岳秀2, 住野 泰清1

Yasushi MATSUKIYO1, Mioe ICHIMORI1, Noritaka WAKUI1, Masao SHINOHARA1, Takashi IKEHARA1, Kouzirou KOBAYASHI1, Kenichi MARUYAMA2, Takahide KUDO2, Yashukiyo SUMINO1

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査室

1Dept. of Gastroenterol. & Hepatology, Toho University Omori Medical Center, 2Ultrasound Labo., Toho University Omori Medical Center

キーワード :

我々はソナゾイド造影超音波による検討から以下の成績を得,報告してきた.健常肝実質は門脈血により灌流されている.慢性肝疾患では病期が進行するとともに門脈血流が低下し,それを代償するがごとく肝実質灌流の動脈化が起こる.この動脈化は類洞圧上昇を惹起し門亢症の増悪をきたす.従って動脈化の詳細解明は門亢症の治療につながる可能性がある.一方急性肝炎でも肝実質灌流の著明な動脈化が惹起される.しかしこのときの門脈血流は減少しておらず,肝炎の沈静化とともに灌流血は門脈由来へともどるが,門脈血流量に変化はない.すなわち門脈血流と関係なく,肝炎の何かが動脈化をきたすものと思われる.そこで今回我々は,肝実質灌流動脈化のメカニズム解明の一環として,急性肝炎経過中の実質灌流動態の変化を時間輝度変化曲線(Time Intensity Curve:以下TIC)により検討し興味ある知見を得たので報告する.
【対象と方法】
過去5年間に入院した各種急性肝炎68例中,急性期からソナゾイド造影超音波で観察し得た41例(A5例,B25例,C1例,E2例,薬2例,AIH6例)を対象とした.病期については入院時を急性期とし,以後週1回の経過観察を行い,トランスアミナーゼが正常値の2倍以内となった時点を回復期とした.検査は早朝空腹時に施行し,装置は東芝AplioXG,探触子は3.75MHzコンベックス型を使用した.造影は推奨量(0.015ml/kg)のソナゾイドを肘静脈からボーラス静注後約30秒間の肝S5/右腎染影画像を右肋間から観察し動画記録した.引き続き,得られた画像からperfusion-parametric image(PPI)とTICを描出し,動脈化の程度,肝・腎の曲線パターンとpeak-time(PT)を経時的に比較検討した.なお,TIC作成に際しては,肝・腎実質に,できるだけ血管を避けて大きなROIを設定するよう心がけた.
【結果】
急性期のPPIでは41例中7例が動脈化のA-pattern,3例が健常肝と同様のP-pattern,31例がその中間のAP-patternを呈していた.AまたはAP-patternを呈した38例中18例が2−3週以内にP-patternとなり,同時に血液検査所見も正常化した.しかし4例はA-patternが継続し,内1例はLOHFの経過で死亡,他の3例もトランスアミナーゼの高値が4週以上にわたり遷延した.AまたはAP-patternから改善した症例のTICを検討すると,急性期ではカーブの立ち上がり,PTともに肝は腎に近似し,いわゆる動脈化を呈していたが,病態の改善とともに肝TICの立ち上がり,PTともに遅くなり,回復期には肝のarrival-time,PTともに健常肝と同等の遅い数値に落ち着いた.
【考察】
今回の検討においても急性期の実質灌流は動脈化している症例が多く,病態の改善とともに門脈化することが確認できた.またその改善は病勢の変化とほぼ並行してもたらされ,炎症による何らかの因子が動脈化を惹起している可能性が強く示唆された.本所見は急性肝炎の病勢把握,予後予測に有用なマーカーとして価値あるものと考えているが,さらにこのメカニズムの解明が門亢症治療につながる可能性が高く,興味深い.