石田 秀明¹, 小松田 智也¹, 古川 佳代子¹, 渡部 多佳子¹, 大山 葉子², 長沼 裕子³, 長井 裕⁴, 小川 眞広⁵, 大野 長行⁶

Hideaki ISHIDA¹, Tomoya KOMATSUDA¹, Kayoko FURUKAWA¹, Takako WATANABE¹, Yoko OHYAMA², Hiroko NAGANUMA³, Hiroshi NAGAI⁴, Masahiro OGAWA⁵, Nagayuki OHNO⁶

¹秋田赤十字病院超音波センター, ²秋田組合総合病院臨床検査科, ³市立横手病院消化器科, ⁴N.G.I.研究所N.G.I.研究所, ⁵駿河台日本大学病院消化器肝臓内科, ⁶GE横河メディカルシステム株式会社超音波担当

¹Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, ²Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, ³Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, ⁴New Generation Imaging Laboratory, New Generation Imaging Laboratory, ⁵Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Surugadai Hospital, ⁶Ultrasound System Group, GE-Healthcare

キーワード :

【背景1】
携帯超音波Vscan（GE Health Care社）は，その機動力から医療の現場で日常的に用いられる機器となってきている．Bモード画像に加え（FFTはないものの）カラードプラ（以下CD，ちなみにVscan装置では流速表示のみ）機能も有しており，気軽に血流情報が得られる利点がある．
【背景2】
門脈がCD上揺らめく炎のようにみえる現象はFlaming portal vein（FPV）*と呼ばれ門脈ガスを示す有用な所見として最近広く用いられている．
【今回の検討】
門脈ガス以外の状態で，VscanのCD上，このFlaming portal veinに極めて類似した所見（門脈が多色カラーで埋め尽くされ，かつ，炎のように揺らめく）を経験した．そこでこの現象をPseudo-FPVとし，この現象がどのような条件で出現するか下記の方法で検討した．
【方法】
ハイエンド装置のCD＋FFT所見をGold StandardとしてVscanのCDを検討した．ちなみに今回比較検討したハイエンド装置は，主に，東芝社製：Aplio500，GE社：LogiqE9，（中心周波数:3-4MHz）である．同時にハイエンド装置とVscan装置で門脈を観察しえた正常門脈群，および下記疾患群におけるPseudo-FPVの出現頻度を検討した．正常門脈25例，門脈腫瘍栓（全例HCC）8例，門脈血流逆流（全例アルコール性肝硬変）5例，門脈内乱流（全例腫瘍浸潤による狭窄による）3例，オスラー病による門脈周囲動脈の拡張2例，CTPV（閉塞門脈周囲の門脈系側副血行路）3例，門脈瘤2例．
【結果】
正常門脈（0/25：0％），門脈腫瘍栓（0/8：0％），門脈血流逆流（0/5：0％），門脈内乱流（2/3：67％），オスラー病（0/2：0％），CTPV（0/3：0％），門脈瘤（0/2：0％）
【まとめ】
門脈血流の種々の状態の中で，門脈血流が乱流状態にある場合のみPseudo-FPVが出現する．
【考察】
Vscanはハイエンド装置に比し空間分解能やカラースケールが劣るため，乱流がある場合，その状態が過度に表示されPseudo-FPVを呈するもの，と考えられる．VscanにはFFT機能が無いため，FPVとPseudo-FPVを識別することは困難であるため，門脈が揺らめく炎のようにみえる現象を認めた場合，門脈ガスと高度の乱流の2つの可能性を念頭に入れ検査をすすめる（ハイエンド装置のFFTで）事が望ましい．新しい装置に対してはその問題点をしっかり認識することが正しい利用法と思われる．
【文献】
Ijuin H et al. Flaming portal vein as a new color Doppler sign of portal gas. J Med Ultrasonics 2008 ;35 :119-23