Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:胆のうⅡ

(S565)

胆嚢病変に対する定量的評価を加えた造影腹部超音波検査の有用性

Utility of contrast-enhanced transabdominal ultrasonography using quantitative analysis for gallbladder diseases

松原 浩, 浦野 文博, 内藤 岳人, 岡村 正造

Hiroshi MATSUBARA, Fumihiro URANO, Takehito NAITOH, Syozo OKAMURA

豊橋市民病院消化器内科

gastroenterology, Toyohashi municipal hospital

キーワード :

【目的】
造影腹部超音波検査(CE-US)においてTime- intensity curve(TIC)を作成し,胆嚢病変のエコー輝度変化の定量的解析を行うこと.さらに,胆嚢病変に対し造影態度診断とTIC診断を含めたCE-USの有用性について検討すること.
【対象】
2010年4月から2012年4月までに体外式腹部超音波検査(US),CTで胆嚢病変を指摘され,当院においてCE-USを施行した77例.内訳は,胆嚢癌(GBCA)14例,胆嚢コレステロールポリープ(GBCP)16例,胆嚢過形成(GBH)1例,胆嚢腺腫(GBA)1例,慢性胆嚢炎(CC)2例,胆嚢腺筋症(ADM)32例,胆石ないし胆砂(GBS)11例であった.GBCA,GBCP,GBH,GBA,CC症例は外科的切除が施行され,病理組織学的根拠が得られている.ADMとGBSは全例で半年以上の経過を追跡し,臨床的に悪性疾患が否定されている.超音波音波観測装置はGE healthcare製LOGIQ E9で,造影モードはAM(Amplitude moduration)法,MI(mechanical index)値は0.35-0.39の設定で行った.
【方法】
GBCAとGBCPの間で,TICを作成し定量的解析を行った.USでB-modeイメージング観察を行い病変描出後に造影剤を投与した.使用造影剤はSonazoidで,perfluorobutanとして16μL(1バイアル)を注射用水2mlで懸濁し,懸濁液として0.015ml/kgをbolus injectionした.造影剤注入後,造影態度の評価を行った.検査終了後,超音波観測装置のハードディスクに保存された造影開始後から連続1分間と,3分後,5分後の10秒間ずつのデジタルデータを再生した.病変のほぼ中央にROI(region of interest)を決定し,超音波観測装置に内蔵されているソフトウェアを用いてTICを作成して解析を行った.本検討はすべて当院倫理審査委員会の承認を得て行われている.検討項目は,1) GBCA,GBCP間で,TICによって定量化されたエコー輝度の上昇速度,上昇率,造影開始1,3,5分後の減少率を比較した.2)広基性病変,壁肥厚病変に対しては,造影によりRASが明らかとなったものをADM,非造影病変をGBSと造影態度診断とした.有茎性病変と,1)でADM,GBS と診断されなかった胆嚢病変はTICによる診断を行った.3) US で単発,広基性,10mm以上のものを悪性,それ以外のものを良性として良悪性疾患診断とし,造影CT(CE-CT)診断とともに,造影態度とTIC診断を加えたCE-USとの診断能を比較した.GBCA14例と,前癌病変としてGBA1例を悪性病変とした.
【結果】
1)造影3,5分後のエコー輝度の減少率は,GBCPで有意に大きかった(p<0.001).エコー輝度の上昇速度,上昇率,1分後の減少率では有意差を認めなかった.2)CE-USの造影態度でADM32例,GBS10例と診断された.1)で最も有意差の得られた5分後の減少率においてROC曲線を作成した.カットオフ値を5分後の減少率が50%以上を悪性,50%以下を良性とすると,TIC単独診断は感度89.5%,特異度86.7%,正診率88.2%であった.さらに,造影態度とTIC診断を加えたCE-USの良悪性診断能は,感度93.5%,特異度86.7%,正診率92.2%であり,それぞれUSの82.3%,86.7%,83.1%,CE-CTの72.6%,93.3%,76.6%よりも優れていた.
【結論】
CE-USは,TIC作成により胆嚢病変の定量的解析が可能であった.CE-US を行い造影態度診断とTIC診断を加えることで,胆嚢病変診断能の向上が得られる.