Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:胆のうⅡ

(S564)

人間ドックで発見された早期胆嚢癌の1例

A case of early gallbladder cancer detected by complete physical examination

大坪 民子1, 岡野 真紀子1, 花澤 沙也佳1, 佐戸 由紀子1, 池田 和典1, 永井 正樹1, 篠崎 勇介2, 金田 暁2, 斉藤 正明2, 杉浦 信之2

Tamiko OTSUBO1, Makiko OKANO1, Sayaka HANAZAWA1, Yukoko SADO1, Kazunori IKEDA1, Masaki NAGAI1, Yusuke SHINOZAKI2, Satoru KANEDA2, Masaaki SAITOU2, Nobuyuki SUGIURA2

1国立病院機構千葉医療センター臨床検査科, 2国立病院機構千葉医療センター内科

1Clinical Laboratory, Chiba Medical Center, 2Internal Medicine, Chiba Medical Center

キーワード :

【はじめに】
早期胆嚢癌とは「リンパ節の有無に関係なく,癌が組織学的に粘膜内または固有筋層に留まるものでRokitansky-Aschoff sinus(RAS)内の上皮内癌は粘膜内癌とみなす」と定義され,術前に観察可能なものはほとんどが隆起型である.他の胆嚢小隆起性病変との鑑別が問題となり,小病変では確定診断が困難である.人間ドックを毎年受けており,初めて5mmの胆嚢ポリープを指摘され,精査目的で施行した超音波検査(US)で診断された早期胆嚢癌の1例を報告する.
【症例】
67歳,男性.毎年当院で人間ドックを受けており,平成X年3月のドックで5mmの胆嚢ポリープを初めて指摘され,精査目的で同年4月外来受診となった.再度超音波検査(診断装置:東芝社製Aplio XG SSA-790A)が施行され,胆嚢体部のくびれ部分に広基性のポリープが認められた.広基性の部分が10mm大で高さが5mmである半月状の形態を示し,内部エコーは均一で肝と同程度の実質エコーを示した.造影CTでは同部は胆嚢のくびれた部分の壁が軽度濃染し,その腹側がやや突出する隆起性変化としてとらえられた.USでの広基性変化と濃染所見から胆嚢癌と考え外科コンサルトとなり,同年6月摘出手術された.病理所見では胆嚢中部に12x4x4mm大の隆起性病変がみられ,乳頭状腺癌と診断された.RASにそった腫瘍の進展はみられたが間質浸潤無くm癌の診断であった.胆嚢内に胆石はなく,コレステローシスは認められず,リンパ節転移も見られなかった.
【考察と結語】
早期胆嚢癌の診断は術前に診断されるものは隆起型(Ⅰ型)であり,その拾い上げがUSであることから,平坦型(Ⅱ型)とされるものはほとんどないと考えられる.USで胆嚢小隆起性病変の超音波分類では腫瘤付着様式が無茎の広基性(Ⅰs)を示すものは胆嚢癌と診断される.有茎性(Ⅰp)の胆嚢癌はほとんどが早期癌としてよいが,Ⅰsのものはその周辺にⅡaやⅡbを伴うことが多く,EUSを含めた注意深い観察が必要である.超音波検診での胆嚢癌の発見率は0.0008-0.04%とされ,非検診群との比較では早期癌が多く,隆起性病変の指摘から診断に繋がっている.胆嚢は超音波検査で比較的描出されやすいが,死角も多く体位変換も含めた丁寧な観察や,表面に近い底部では高周波プローブでの観察も行うことで早期癌の発見も高まると考えられる.今回,毎年人間ドックで超音波を受け,初めて指摘されたポリープが胆嚢癌であった症例を経験し,経年での丁寧な観察が早期癌の検出に有用であると考えられた.Ⅰpでは経過観察となったあとから診断へということもあるが,Ⅰsでは早期に検査を進めることが肝要で,超音波専門医の検診後の適切な事後管理が望まれる.