Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝:治療効果判定Ⅱ

(S561)

Sonazoid造影超音波検査を用いたソラフェニブ投与時の血流変化の検討

Examination of the hepatic blood flow change at the time of sorafenib administration by using Sonazoid contrast-enhanced ultrasonography

渡邊 幸信1, 小川 眞広1, 中河原 浩史1, 廣井 喜一1, 山本 敏樹1, 藤根 里抄1, 杉山 尚子1, 古田 武慈1, 森山 光彦1, 石田 秀明2

Yukinobu WATANABE1, Masahiro OGAWA1, Hiroshi NAKAGAWARA1, Yoshikazu HIROI1, Toshiki YAMAMOTO1, Risa TOUNE1, Naoko SUGIYAMA1, Takesige FURUTA1, Mituhiko MORIYAMA1, Hideaki ISHIDA2

1駿河台日本大学病院消化器肝臓内科, 2秋田赤十字病院超音波センター

1Gastroentererology and hepatology, Surugadai Nihon university school of medicine, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
2009年より本邦でも肝細胞癌(以下HCC)に対する分子標的薬治療が可能になった.現在ソラフェニブのみが投与可能であり,多くの施設で投与されている.本剤は抗血管新生薬であり肝腫瘍における詳細な血流変化について興味がもたれるところであるが,これまであまり論じられていない.血流検査の評価としては超音波検査,CT,MRIなどあるが,この中で空間・時間分解能の高い造影超音波検査が詳細な血流変化の検討を行うのには適していると考えられる.今回我々は,Sonazoid造影超音波検査を用いてソラフェニブ投与前後における肝血流動態の変化を検討したので報告する.
【方法】
対象は,当院にてソラフェニブを投与された進行肝細胞癌患者8症例である.超音波B-modeで評価結節を決定し,ソラフェニブ投与前,および投与後直後より1週間以内は可能な限り連日,以後1〜2週間ごとにSonazoidを用いた造影超音波検査を用いて肝の血行動態の変化を観察した.使用装置はGEヘルスケア社製LOGIQE9,使用探触子はC1-5,9L.使用造影剤はSonazoid 0.015ml/kgまたは0.5ml/bodyを静脈内ボーラス投与し約40秒までを動脈相,10分以降を後期血管相として撮影した.また血管構築については加算画像を用いて評価を行なった.
【結果】
8症例のうち,約半数の症例にソラフェニブ投与翌日より動脈流入時間の遅延を認めた.PR症例においては血行動態の変化は顕著であり,1例においては投与翌日より約10秒もの動脈流入時間の遅延が認められ,一週間後の効果判定時にはTAE後と類似した多発する欠損像が得られた.血流変化の変化は1週間以内においては3日目以降では大きな変化は認めなかった.Sonazoidを用いた造影超音波検査は微細血流の変化が高い時間分解能で観察可能であり治療前後の血流変化の差を捉えることが可能であった.
【まとめ】
ソラフェニブはmultikinase inhibitorであり,腫瘍細胞増殖抑制と血管新生阻害の二つの作用機序により抗腫瘍効果を発揮する.Sonazoidを用いた造影超音波検査は血行動態を高い空間・時間分解能でリアルタイムに観察できるという他のモダリティにはない特徴がある.造影超音波検査を用いてソラフェニブ投与前後の比較を行うことで,ソラフェニブの抗腫瘍効果および早期の血流変化を捉えることができた.このことは今後の症例の積み重ねにより,早期治療効果判定や治療効果予測などが可能になることが予想され治療中のモニタリングとしても有用な手法になると考えられた.
【結語】
造影超音波検査はソラフェニブ投与後の血行動態の変化を鋭敏に捉えることができ,経過観察に有用な手法となることが示唆された.