Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝癌Ⅱ

(S560)

類似画像検索機能を用いた肝腫瘍のCAD(Computer-aided diagnosis)の試み

Pilot study of Computer-aided diagnosis (CAD) for hepatic nodules using image-to-image matching

松本 直樹, 小川 眞広, 三浦 隆生, 塩澤 克彦, 阿部 真久, 中河原 浩史, 森山 光彦

Naoki MATSUMOTO, Masahiro OGAWA, Takao MIURA, Katsuhiko SHIOZAWA, Masahisa ABE, Hiroshi NAKAGAWARA, Mitsuhiko MORIYAMA

日本大学医学部消化器肝臓内科

Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Medicine, Nihon University School of Medicine

キーワード :

【目的】
画像診断の究極の形態の一つとして,コンピュータによる自動診断であるCADが挙げられる.超音波検査においては主に乳腺領域で開発が進んでいるが,腹部領域では報告は少ない.また最近の画像認識機能の進歩により,類似画像検索が可能となっている.任意の画像に対して,その他の複数枚の画像を対象として検索を行うと,それぞれ特徴量を算出して,類似した画像を一致率に従って抽出するというものである.胸部CTにおいて臨床応用が行われているが,超音波検査ではあまり報告されていない.今回,本機能によって検索を行う画像管理ソフトを肝腫瘍の鑑別に使用したので報告する.
【方法】
使用ソフトはSimiPix(フリーソフト).使用装置はAplio MX,Xario XG,Xario(東芝メディカルシステムズ).使用探触子は375BT.肝嚢胞,肝血管腫,肝細胞癌(HCC)各々5例について撮影した.血管腫のBモード所見は4例で高エコー,1例で低エコーであり,HCCのBモード所見は3例でモザイク,1例で低エコー,1例で高エコー.Focusは1点で病変下端とし,Gain,Dynamic Rangeなどのパラメータも固定し,自動補正機能も使用しなかった.Bモード画像を保存した後,装置外へデータを出力して,外部のPCで上記ソフトを用いて比較を行った.データは病変にROIを置いて切り抜きしたものを使用した.
【成績】
8組が類似と判定され,上位から血管腫-HCC,嚢胞-嚢胞,血管腫-HCC,血管腫-血管腫,HCC-HCC,嚢胞-HCC,嚢胞-嚢胞,嚢胞-嚢胞の組み合わせで,5組で一致,3組で不一致だった.誤って嚢胞または血管腫と類似していると判定されたHCCは,いずれもモザイクパターンであった.同一のHCCで,嚢胞,血管腫それぞれと類似していると判定された症例もあった.
【考察】
今回,類似画像判定の精度は,嚢胞と嚢胞,血管腫と血管腫においては比較的良好であった.HCCについては精度が高くはなかった.本ソフトでは特徴量の内容は出力されないが,同一症例が嚢胞・血管腫それぞれと類似と判定されたことから,病変のエコーレベルのみで判断されている訳ではないことが推定された.問題点として,同様の条件で比較するため,撮像や画像切り抜きをある程度統一する必要があったが,周囲肝の情報も同様に評価されてしまう点や,断面の選択による客観性の低下などが挙げられた.今後,ソフトの改良や撮像法の工夫など,様々な改善の余地があると考えられた.