Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:膵:超音波内視鏡・他

(S555)

特異な膵嚢胞性病変の診断に対してEUSが有用であったIPMN由来の膵浸潤癌の一例

A case of pancreatic invasive ductal carcinoma derived from IPMN diagnosed by EUS for atypical pancreatic cystic lesions

藤井 雅邦, 山本 久美子, 伊藤 守, 石山 修平, 藤原 明子, 吉岡 正雄, 塩出 純二, 糸島 達也

Masakuni FUJII, Kumiko YAMAMOTO, Mamoru ITO, Shuhei ISHIYAMA, Akiko FUJIWARA, Masao YOSHIOKA, Junji SHIODE, Tatsuya ITOSHIMA

岡山済生会総合病院内科

Internal Medicine, Okayama Saiseikai General Hospital

キーワード :

症例は42歳男性.3年前に父親が膵頭部IPMC(上皮内癌)の手術をしている.健診の腹部USで約22mm大の膵嚢胞性病変を指摘され,精査目的で当科受診.腹部造影CT検査では,膵体部から尾部にかけて多発性に大小不同の嚢胞性病変を認めた.膵尾部の主膵管は拡張していた.慢性膵炎,膵仮性嚢胞あるいは,膵体部癌とそれによる貯留嚢胞が疑われた.PETCT検査では,膵体部にFDGの異常集積 (SUVmax4.19, 遅延相4.73)があり,膵癌が強く疑われた.腫瘍マーカーは,CA19-9 206.4, Span 46と上昇を認めた.MRCPでも同様に多発性の大小不同な嚢胞性病変と尾側膵管の拡張を認めた.MRIでは,6×3.5cm大の充実成分と嚢胞成分が混在した腫瘤として描出され,拡散強調画像では高信号であった.以上の検査所見より膵悪性腫瘍が疑われたが,IPMN由来の膵癌か通常型膵癌に貯留嚢胞を伴った病態かの判断は困難であった.続いて超音波内視鏡検査 (EUS)を施行.多発性の嚢胞を認め,嚢胞内には結節が散見された.結節径が大きく,腫瘤様にもみえる部位を認めた.EUS所見からIPMN由来の膵浸潤癌の可能性が高いものと判断した.内視鏡的膵管造影検査 (ERP)施行.乳頭部から粘液の排出は認めず.膵管造影で嚢胞が造影されたが,体部で途絶していた.膵液細胞診と擦過細胞診では,悪性所見を得られなかったが,同日内視鏡的経鼻膵管ドレナージ (ENPD)を留置し,計5回膵液を採取し,1回目の膵液細胞診でclassⅣ(adenocarcinoma)を認めた.EUSで嚢胞内に多数の結節を認めたことから,膵癌+貯留嚢胞よりもIPMN由来の膵浸潤癌の可能性が高いものと判断した.腫瘤は腹腔動脈と近接していたため,腹腔動脈合併膵尾側切除術 (DP-CAR)施行した.病理結果は,Intraductal papillary-mucinous carcinoma, pb, TS3, INFβ, ly1, v0, ne0, mpd(-), s(-), rp(+), pv(+), a(-), pl(-), pcm(-), dpm(-), 11dp(+), pT4, pN1,であった.術後化学療法ゲムシタビンを開始し,約5か月生存中である.超音波内視鏡検査 (EUS)は,小膵癌の診断や,膵嚢胞性病変の質的診断で最も精度の高い検査として認識されている.特異な膵嚢胞性病変の診断に対してEUSが有用であったIPMN由来の膵浸潤癌の一例を経験したので報告する.