Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:膵:超音波内視鏡・他

(S554)

膵神経内分泌腫瘍に対するEUS-FNAの有用性の検討

The clinical utility of EUS-FNA in the diagnosis of pancreatic neuroendocrine tumor

菅野 敦

Atsushi KANNO

東北大学病院消化器内科

Department of Gastroenterology, Tohoku University Hospital

キーワード :

【背景】
膵充実性腫瘍に対するEUS-FNAの病理組織学的診断は有用とされているが,膵神経内分泌腫瘍(PNET)に対する有用性は不明である.
【目的】
PNETに対するEUS-FNAの有用性を検討すること.(対象)2008年1月から2012年9月まで当科で施行したEUS-FNA409例中最終診断がPNETであった38例(平均年齢61.6±13.1歳,男性:女性=23:15).
【方法】
超音波内視鏡はオリンパス社製GF-UCT240,もしくはGF-UC240P,観測装置はALOKA社製Prosoundα10を使用した.EUS-FNAの穿刺針は,Olympus社製NA-11J-KB,Boston社製Expect 22Gを主に用いた.穿刺の際に,シリンジを用いた陰圧により血液が吸引される場合は,穿刺針の内筒をゆっくり引きながら穿刺するslow pull法を用いた.以下の(1)内分泌腫瘍の組織学的診断の可否 (2)PNETの手術例において,EUS-FNAの組織におけるMIB1 LIと手術標本におけるMIB1 LIの値の比較について検討した.また(3)当院におけるEUS-FNAの病理組織学的診断のための検体処理の工夫を紹介する.
【結果】
(1)最終診断がPNETだった38例中,EUS-FNAでPNETと診断できた症例は35例(92%)だった.診断できた症例と出来なかった症例の腫瘍径を比較すると19.5±10.5 mm: 9.5±1.7 mm, p= 0.053で有意差を認めなかったが,腫瘍径が小さい症例は診断できない傾向を認めた.(2)手術例15例のうち,EUS-FNAで採取した組織のMIB1 LIと切除標本のMIB1 LIからWHO grade分類を比較したところ,合致した症例は12例(80%)だった.また,EUS-FNAによる組織と切除標本のKi67のPearson相関係数を求めると0.80と非常に高い相関を認めた.(3)当院におけるEUS-FNAによる病理組織学的診断のための検体処理は,a.穿刺後に検体をプレパラートの上に押し出す.b.イトミミズ状の部分を取り出し,ホルマリンで満たしたディッシュの上に移し,18G注射針で白色部の組織と凝血塊の部分を切り分けてから組織診に提出する.白色部の組織は,パラフィンブロックに固定する際に,バイオプシーシートを用いて平面に敷き詰めるようにする.c.プレパラートに残った液体成分を2枚のプレパラートですりあわせ,1枚は最終的な細胞診のためにエタノールで固定後,パパニコロ染色を行い,もう1枚は上皮成分の採取確認のため,Diff Quick染色を行い,上皮細胞の採取を確認後,手技を終了する.以上の検体処理を行うことで,高い診断能を維持しており,PNETの診断にも有用であった.
【まとめ】
EUS-FNAによるPNETの病理組織学的診断能は,極めて高く,Grade分類も推測できる可能性が示唆された.EUS-FNAで採取された検体を全て診断に用いる当院の検体処理は,EUS-FNAの病理組織学的診断能を向上させるために極めて有用であった.