Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:人間ドック

(S552)

当院人間ドック超音波検査の腹部超音波がん検診基準からの再評価

Evaluation of Our Helth Check Ultrasonography by Standard of the Japanese Society of Cancer Screening

若杉 聡1, 小川 由佳2, 藤田 あゆみ2, 北浦 幸一2, 小宮 雅明2, 長谷川 貴士2, 小川 ゆかり2, 山口 実紀2, 金輪 智子2, 石田 秀明3

Satoshi WAKASUGI1, Yuka OGAWA2, Ayumi FUJITA2, Kouichi KITAURA2, Masaaki KOMIYA2, Takashi HASEGAWA2, Yukari OGAWA2, Miki YAMAGUCHI2, Tomoko KANAWA2, Hideaki ISHIDA3

1亀田総合病院消化器診断科, 2亀田総合病院超音波検査室, 3秋田赤十字病院超音波センター

1Division of Digestive Diagnosis, Kameda Medical Center Hospital, 2Division of Ultrasonographic examination, Kameda Medical Center Hospital, 3Center of Diagnostic Ulrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
腹部超音波がん検診基準(以下,がん検診基準)超音波の質の向上と診断の統一化を目的には消化器がん検診学会が作成した検診基準である.この基準はスクリーニング超音波検査の基準として,ひろく普及するものと考える.我々は,がん検診基準を用いて,当院人間ドックの超音波検査を再評価に使用してきた.今回はさらに症例を加えて検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は2009年5月〜2011年3月に当院人間ドックで超音波検査が行われた13531例である.これらの症例のうち要精査と判定された症例を,がん検診基準からカテゴリー分類した.カテゴリー3(以下C3)の初回指摘例およびC4,C5を要精査妥当とした.なお,当院人間ドックでは腫瘍を否定できない場合,初回指摘例を要精査としていた.
【結果】
要精査とした症例は,全13531例中602例(4.4%)だった.要精査例602例中,精査結果が判明した症例は311例(51.6%)だった.その内訳は肝57例,胆道71例,膵104例,脾4例,腎34例,その他41例だった.肝57例中C2は11例,C3は22例,C4は24例だったC2の11例中,精査結果もふくめて再評価すると,精査必要なしと思われたのは9例(血管腫8例,肝腫瘤1例)だった.C2胆道71例中C2は37例,C3は25例,C4は9例だった.C2の37例中,結果的に精査必要なしと思われた症例は36例(胆嚢腺筋腫症32例,胆嚢壁肥厚2,胆嚢ポリープ1例,肝血管腫による圧排1例)だった.膵104例中C2は7例,C3は68例,C4は29例だった.C2の7例(高エコー結節1例,5mm未満の膵嚢胞6例)のすべてが結果的に精査必要なしと思われた.脾4例中C2は1例,C3は2例,C4は1例だった.C2の1例は脾動脈瘤であった.癌ではないが,精査すべき症例だった.腎34例中C2は15例,C3は13例,C4は5例,C5は1例だった.C2の15例中,血管筋脂肪腫が6例,腎回転異常が1例存在した.これらは検診基準から血管筋脂肪腫と診断可能だった.他の8例は,尿管結石,尿管狭窄など,精査妥当と思われた.その他の臓器の41例中,C2は6例,C3は10例,C4は25例だった.C2の6例はすべて癌を疑う所見ではなかったが,脾動脈石灰化1例,腹腔動脈瘤1,腹部大動脈瘤4例で,専門医に紹介が必要な症例だった.当院で要精査とした症例602例中,がん検診基準でC2で,精査結果からも要精査が妥当でないと思われた症例は59例(9.8%)だった.一方,肝でC4から肝細胞癌2例,C3から肝内胆管癌1例が発見された.胆道ではC3から膵胆管合流異常が1例発見され,現在経過観察中である.膵ではC4から膵癌3例,悪性リンパ腫(膵近傍)1例,C3からIPMA1例が発見された.腎ではC3から2例,C4から3例,C5から1例,腎細胞癌が発見された.その他の臓器でもC3,C4から治療が必要な疾患が9例(悪性8例,良性1例)発見された.
【考察】
神宮字らの全国アンケート集計によると,超音波検診の要精査は122施設平均で4.3%であった.当院では2年弱の集計で4.4%だった.全国平均と同じ精査率だが,より低い精査率で効率よく癌を発見することが望ましい.がん検診基準から精査すべきでないと判断された症例を除くと,当院の精査率は4.0%に低下する.各施設で検診超音波検査のquality controlが行われていると思われるが,その指標としてがん検診基準を使用することは有用であると考えた.
【結語】
腹部超音波がん検診基準から各施設のがん検診の再評価を行うことは,検診のquality controlのために有用である.