Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:血流

(S550)

Tissue vibrationを消去する試み

Trial for eliminating perivascular color artifact

長沼 裕子1, 石田 秀明2, 長井 裕3, 船岡 正人1, 大山 葉子4, 渡部 多佳子2

Hiroko NAGANUMA1, Hideaki ISHIDA2, Hiroshi NAGAI3, Masato FUNAOKA1, Youko OHYAMA4, Takako WATANABE2

1市立横手病院消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3NGI研究所NGI研究所, 4秋田組合総合病院臨床検査科

1Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3New Generation Imaging Laboratory, New Generation Imaging Laboratory, 4Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hodpital

キーワード :

【はじめに】
Tissue vibration (perivascular color artifact,以下Tv)は,カラードプラにおいて血管内を勢いよく流れる乱流により周辺組織が振動し,血管周囲にカラーノイズを発生する現象であり,狭窄,動静脈瘻,動脈瘤など血流速度の速くなる血管病変の周囲で観察され,血管病変の拾い上げ,および診断に役立っている1).しかし,このTv により病変部の血管や周囲の組織の情報が埋没してしまい,観察の妨げになることもしばしば経験する.このような問題点を改善する目的でTv観察時に以下の検討を行い若干の知見を得たので報告する.使用装置:東芝社製Aplio XG, Xario XG, 日立社製Preirus,convex probe 2-5MHz.
【対象と方法】
TvはMiddletonらの定義に基づき,1)血管周囲のある限局した範囲に出現する不規則で細かな点状の赤青の混在したカラーシグナル,2)拍動性で収縮期に多く出現し拡張期に減少または消失する,3)FFTで基線の上下にほぼ対称な拍動性の信号,という条件を満たすものとした.対象はTvが観察された6例(動脈硬化による上腸間膜動脈の部分的狭窄2例,膵癌浸潤による腹腔動脈の狭窄2例,門脈腫瘍栓による動脈門脈シャント1例,傍神経節腫1例).方法はa)通常の流速レンジ(620Hz前後),b)その倍の流速レンジ(1200Hz前後),c)3倍の流速レンジ(1800Hz前後),傍神経節腫の腫瘍内血管の観察では,d)通常の1/3〜1/2の流速レンジ(300Hz前後)も追加し,血管内血流と周囲のTvの表示の状態を観察した.
【結果】
a)からc)と流速レンジを上げるに従い,Tvが次第に減少し消失し,血管病変とそれを取り巻く周囲組織の観察が容易になった.血管内の血流表示はalaiasingが軽減した.d)流速レンジを下げるとTvが増強し,血管周囲の情報がTvに埋没し観察に支障をきたした.
【まとめと考察】
カラードプラでは動きのある反射体は何らかの位相差を生ずるためカラー表示されるが,乱流があると血管壁への圧の変動幅が大きいために血管周囲の組織へ振動が伝わり,その振動がTvとして表示される.乱流は高速なため,流速レンジを上げても血流情報が欠落することはないが,周辺組織の振動は低速(ドプラ周波数シフトが小)なため流速レンジを上げると消失する.Tvは血管病変の存在を示唆する所見として臨床的に有用であるが,周囲組織がその信号に埋没するという欠点もあり,その消去方法が求められてきた.今回の検討により,流速レンジを上げることがその方法であると考えられた.高速の乱流を拾いあげるTvは,それを消去する手法を得ることで,診断に有用な所見として完結すると思われる.アーチファクトの機序を理解したカラードプラの表示テクニックの有効利用は重要である.また,一方で腫瘍内血管の観察時など,腫瘍血管を拾い上げるために流速レンジを下げすぎるとTvが増強して腫瘍全体が信号に埋没し,観察に支障をきたすため最適な流速レンジで観察することの重要性を再確認した.カラードプラでは流速レンジを変えると得られる情報が異なり,求める情報に応じて最適な流速レンジに設定する必要がある.
【参考文献】
Middleton WD, Erickson S, Melson GL. Perivascular color Artifact: pathologic significance and appearance on color Doppler US images. Radiology 1989; 171: 647-652.